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骨粗鬆症について

骨粗鬆症と骨折

骨粗鬆症は骨がもろくなり、軽い衝撃やちょっとした転倒で骨折しやすくなる疾患です。特に、背骨や太ももの付け根を骨折すると「寝たきり」になってしまうことが少なくありません。

骨折を起こしやすい部位
背骨の骨折 肩の骨折 手首の骨折 太ももの付け根の骨折
健康な背骨の骨折 骨密度が高く丈夫 骨粗鬆症の背骨の断面 骨の中がスカスカの状態

健康な骨は、網目状の構造をした「骨梁こつりょう」がびっしりと詰まっていますが、骨粗鬆症の人は、この骨梁が細くなり、弱くなっているため、骨折しやすくなります。

骨折が原因で車椅子での生活や寝たきりの状態になると、QOL(生活の質)は著しく低下します。
また、1度骨折を起こすと、次々と骨折を起こす危険性が高くなるため、転倒には注意をしましょう。

転倒による骨折を防ぎましょう

骨粗鬆症の患者さんは、日頃から転ばないための工夫をしておくことが大切です。

自宅
  • 室内の段差をなくす
  • 照明をつけて足元を明るくする
  • 足元にあるコードや小物などをかたづける
  • カーペットなど敷物の端を固定する
  • 玄関、階段、トイレ、浴室に手すりや滑り止めをつける
  • 浴室は滑りやすいためスノコを敷く
転倒による骨折を防ぎましょう 自宅画像
外出時
  • 自分のサイズにあった服や靴を選ぶ
  • スリッパやサンダルは履かない
  • すその絡みやすい服(ロングスカートや和服)は避ける
  • 転びやすい方は杖を用意する
  • 雨の日の外出は避ける
  • 服用している薬や持病に注意する
転倒による骨折を防ぎましょう 外出時画像

眠気などが出やすい薬を服用している方はふらつきやすいため注意しましょう。また、転倒の原因となる病気(足や膝の痛み、めまいなど)をもっている方は、早めに医師の診察を受けましょう。

その症状は「老化」によるものですか?

こんな症状は思い当たりませんか?
↓

このような場合、骨粗鬆症の可能性が考えられます。

骨粗鬆症は、はっきりとした自覚症状はないため、背中が丸くなったのは「老化」によるものだと思い込み、症状に気付かない場合もあります。
このような症状が思い当たる方は、早めに医療機関で詳しく診てもらいましょう。

骨粗鬆症の原因は?

骨粗鬆症は閉経後の女性や高齢者に多くみられ、骨の強度が低下し、骨折しやすくなる疾患です。骨は髪の毛や皮膚と同じように、常に新陳代謝が行われています(骨代謝)。この骨代謝のバランスが崩れ、骨量の減少や骨質の劣化により、骨粗鬆症を起こしやすくなります。

若年期に骨密度を高くして骨粗鬆症を予防しましょう!

若年期に骨密度を高くしておくと後年になっても骨折しにくいといわれています。丈夫な骨の形成には、生活習慣(特に食習慣と運動習慣)が大きく影響しており、偏食や運動不足、過度のダイエットは骨密度を低下させてしまいます。若年期に必要な栄養素(カルシウムやビタミンDなど)をしっかり摂取し、身体活動を励行することが骨粗鬆症の発症予防に重要であると考えられています。

40~50歳を境に骨量は急に減少

骨密度は、生活習慣のほかに遺伝的な影響も受けるため、その両者を考慮した骨密度の管理が必要です。生活習慣を見直し、家族全員で骨粗鬆症の予防に取り組みましょう。

どのような人が骨粗鬆症になりやすい?

骨粗鬆症になる要因はさまざまです。

骨粗鬆症の危険因子の中には、「避けられるもの」と「避けられないもの」があります。
生活習慣を改善するなど、努力で避けられる危険因子はできるだけ減らすように心がけましょう。

骨粗鬆症の診断と治療

診断

検査を行い、結果をもとに医師が診断します。

〈骨粗鬆症の主な検査方法〉

※検査の種類は病院によって異なります。

エックス線写真
DXA法

●問診

病歴や生活習慣などを問診します。

●画像診断

背骨のエックス線写真を撮り、脆弱性骨折や変形の有無を確認します。

●血液・尿検査

尿や血液から「骨代謝マーカー」を測定し、骨の代謝状態を調べます。また、骨粗鬆症に似た病気との鑑別を行います。

●骨量検査

DXA法、MD法などの検査により、骨密度を測定します。

診断
治療

お薬が治療の中心となります。

骨粗鬆症と診断された場合は、生活習慣の改善と同時に、お薬による治療を開始します。治療薬には、「骨の吸収を抑える薬」と「骨の形成を助ける薬」があります。

骨粗鬆症の診断と治療 治療

〈主な治療薬〉

●ビスフォスフォネート薬

●女性ホルモン薬

●活性型ビタミンD3

●カルシウム薬

●副甲状腺ホルモン薬    など

※患者さんの状態にあわせて、いくつかの薬剤が組み合わされて処方されることもあります。

骨粗鬆症の治療期間は長期にわたる場合が多いため、食事療法や運動療法と併せ、しっかりとお薬を飲み続けましょう。 また、骨粗鬆症の介護患者さんにおいても、おむつ交換時や入浴時の骨折が多いことから、治療を継続することが重要です。

骨粗鬆症と日常生活~食生活編~

骨粗鬆症の治療や予防に必要な栄養素を積極的に摂取しましょう。

エネルギー量、各栄養素ともにバランスが重要です。そのうえで、さらに必要な栄養素を摂取しましょう。

〈骨粗鬆症に必要な栄養素の働きと1日あたりの摂取目標量〉

横にスクロールします。

カルシウム

(目標量:食品から700~800mg

ビタミンD

(目標量:10~20μg

ビタミンK

(目標量:250~300μg

骨をつくるのに欠かせない栄養素。体内にあるカルシウムのうち99%は骨と歯に存在します。

〈カルシウムを多く含む食品〉

牛乳・ヨーグルト・豆腐・小松菜など

牛乳・ヨーグルト・豆腐・小松菜など

カルシウムの吸収率を高め、骨の新陳代謝を活性化させます。日光を浴びることにより皮膚でも生成されます。

〈ビタミンDを多く含む食品〉

鮭・うなぎ・さんま・しいたけなど

鮭・うなぎ・さんま・しいたけなど

カルシウムが骨となる際に必要な栄養素です。骨からのカルシウム流出を抑える働きもあります。

〈ビタミンKを多く含む食品〉

納豆・ほうれん草・小松菜など

納豆・ほうれん草・小松菜など

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 編・著:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版,2015,p79,ライフサイエンス出版より改変

カルシウム薬やサプリメントとビタミンD(活性型ビタミンD3薬)の併用時には、高カルシウム血症に注意が必要です。
また、日光を浴びることでビタミンDが生成されるため、適度に日光浴をしましょう。

骨粗鬆症と日常生活~運動編~

それぞれの患者さんにあった方法で体を動かす習慣を身につけましょう。

骨粗鬆症の患者さんは「運動せず安静にしたほうがよいのでは?」と考えてしまいがちですが、無重力の宇宙から帰ってきた宇宙飛行士の骨量が減っていたことからも、骨に力(負荷)がかかる適度な運動は骨の強さを維持する効果があるといわれています。

ウォーキング、ランニング、エアロビクスなどは、特に骨密度低下防止によいとされていますが、体を動かすことを意識して日常生活を送るだけでも効果があるため、できることを少しずつでも継続して行うことが重要です。

【監修】医薬情報研究所/株式会社エス・アイ・シー
公園前薬局(東京都)薬剤師 堀 美智子 先生
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