<こころの症状>
- 不安になったり、緊張したりする
- ゆううつになる
- イライラしたり、かっとなったりする
- 他人にやつあたりしてしまう
- 集中力の低下
- 無気力
毎月、生理前にイライラしたり気分が落ち込んだり、つらい症状を感じていても、仕事や家事などに追われて、がまんしていませんか。イライラをぶつけてしまうことで、大切な人を傷つけてしまったりするのはとても悲しいことです。そうなる前に、ゆっくりと自分のからだやこころの声に耳をかたむけてほしい、女性のからだに関する正しい知識をもって、ひとりで悩まずケアしてほしいと思い、「わたしメソッド ~毎日を自分らしく過ごすために~」のページを作成しました。
【監修】 医療法人 円山公園メンタルクリニック 院長 白木 淳子 先生
生理前になると気持ちが不安定になったり、家族や友人にイライラしたり。 小さな変化は誰にでも起こることですが、ひどくなるとふだんの生活に影響しはじめてしまうことがあります。 「生理前だから」「みんなそうだから」と受け流してしまっていませんか。 自分のからだやこころの声に耳をかたむけて、自分らしくおだやかに毎日を過ごしましょう。
毎月、生理前になるとふだんよりもイライラしたり気分が落ち込んだり、乳房が張ったり。そんなつらい症状を感じていませんか?
もしかしたらそれは「月経前症候群(PMS)」かもしれません。PMSは、生理前の3~10日間ほど続くからだやこころの症状で、生理がはじまると軽くなったりおさまったりするのが特徴です。日本では生理のある女性の約70~80%に何らかの症状があるといわれていて、程度の差はあっても多くの女性が感じるものです。
<こころの症状>
<からだの症状>
PMSの中でも、特にこころの症状が強く出るタイプは「月経前不快気分障害(PMDD)」とよばれます。
一般的にPMSよりPMDDのほうが重度と考えられていて、これらの症状によって日常生活に支障が出ることがよくあります。PMDDはうつ病やパニック障害などほかの病気と症状が似ているため、医師の診断を受けてほかの病気ではないことを確認することが大切です。話を聞いてくれる人がいるだけでも、こころが軽くなったり、過ごしやすくなったりすることもあるので、ひとりで悩まずに医師へ相談しましょう。
<こころの症状>
<からだの症状>
生理前になるとあてはまると思う項目にチェックをいれてみましょう。
生理前のこころの症状が生活に影響しはじめているかもしれません。ゆっくりと自分のこころの声に耳をかたむける時間をもつことを心がけてみましょう。自分にとっても周りの大切な人にとってもよい状態を生み出しますよ。
上記でチェックをつけた項目に加えて、以下も確認してみましょう。
生理前のこころの症状がふだんの生活により大きく影響して、こころに疲れがたまっているかもしれません。 自分のこころの声を聞き流したり、周りの人に言いづらいからとムリをしてしまったりすると、ますますこころの疲れがたまってしまいます。はやめに医師に話を聞いてもらうなど、解決の糸口を見つけてみましょう。 また、生理がはじまってもこころが落ち着かないときは、ほかの病気がかくれているかもしれません。病院を受診してみましょう。
女性の心身の変化には、女性ホルモンが大きく関わっています。思春期から成熟期、更年期、老年期と一生涯を通してホルモンの量が大きく変わるほか、出産・育児などライフイベントごとに男性とは異なる変化を経験します。
生理前のからだやこころの変化は多くの女性にあるものですが、症状の種類や現れ方、程度には大きく個人差があります。PMSやPMDDがつらくて仕事に行けなかったり、家事ができなかったりする人もいれば、あまり気にならないという人までさまざまです。
また、年齢によってもPMSやPMDDの現れ方は異なります。20歳代の頃は乳房の張りや下腹部痛など、からだの症状が気になることが多いようです。
一方で30歳代になると、からだの症状に加えてこころの症状も強くなることがあります。こころの症状の中でも、特に怒りっぽくなったりイライラしたりすることが増える人もいます。PMSやPMDDの原因ははっきりとはわかっていませんが、女性ホルモンの変動が関係していると考えられています。
PMSは「30歳代中期症候群」ともよばれるように、30歳代で最も症状が出やすくなります。30歳代は女性ホルモンの分泌がピークを迎え、生理に関する不調が出やすい時期です。また出産前後のホルモンバランスの乱れによって症状が重くなったと感じる人もいます。
「生理前だから仕方がない」とすませると、PMSやPMDDは仕事や家庭、自分自身へさまざまな影響を与えます。
働く女性が増える中、PMSやPMDDのせいで退職を考えたり昇進を辞退したりするなど、仕事にも大きな影響が出ることがあります。PMSやPMDDの症状によってふだんの生活に支障を感じたら、生活習慣の改善などのセルフケアを行うとともに、ひとりで悩まずにはやめに婦人科などを受診しましょう。
正しい知識でPMSやPMDDとつきあおう
健康に気を遣っている人ほど、PMSやPMDDで仕事のパフォーマンスが下がる割合が低いという研究もあります(日本医療政策機構「働く女性の健康増進調査 2018」)。女性のからだに関する正しい知識をもつことは、仕事や家庭をもちながらPMSやPMDDと上手につきあっていくのに役立ちます。
からだの症状に加えてイライラしたり、気分が不安定になったりするなどこころの症状も起こると、周りの人との関係にも大きな影響を与えてしまいます。また、周囲にやつあたりをして大切な人を傷つけてしまうこともあるかもしれません。あるいは大切な人からPMSやPMDDについての理解を得られずにつらい思いをすることもあるでしょう。
PMSやPMDDの冊子を活用しよう
生理に関する悩みは男性には理解されにくいものですし、女性同士でも個人差があるのでわかってもらえないことがあります。そのようなときはPMSやPMDDについて書かれた冊子や記事のコピーなどを渡して読んでもらうといいでしょう。PMSやPMDDについて周囲の理解が深まれば、誤解されることも少なくなるのではないでしょうか。
ホルモンやライフステージが生涯で大きく変化する女性は男性よりもうつになりやすく、生涯有病率は女性が男性の約2倍とされています。うつを含む気分障害は男性49万5000人に対して女性78万1000人と約30万人も多い※といわれており、うつは女性にとって他人ごとではありません。
※厚生労働省患者調査 2017年
PMSやPMDD、周産期の抑うつ、更年期の抑うつなど、女性には特有の抑うつがあります。特に、妊娠中から産後にかけての周産期はホルモンの変動が大きく、こころのバランスを崩してしまうことも。周産期うつになると、疲れやすくなったり、眠れなかったり、赤ちゃんへの愛情を感じられなかったり、育児が楽しめないこともあります。すべてのおかあさんが、毎日元気に完璧な育児をしているのではありません。「誰にでも起こること」と必要以上に悩まずに、からだを休めて自分のこころの声に耳をかたむけてみましょう。
周産期のからだとこころの変化について
PMSやPMDDとつきあうための自分にあったセルフケアを見つけておくと、対処がしやすくなります。
まずは症状日誌をつけてみましょう。どのようなタイミングで、どの程度の期間、どのような症状が出やすいのかなど自分のリズムを把握することが、セルフケアの第一歩です。
ライフスタイルを見直すこともセルフケアにつながります。バランスのよい食事をとって、アルコールやカフェインは控えめに。ストレスをため込まないようにこころとからだを休めることを意識してみましょう。
運動もPMSやPMDDなどを予防したり、症状をやわらげたりする効果があります。ヨガやウォーキング、水泳、ジョギング、エアロビクスなど自分にあったものを取り入れましょう。時間は短めでもいいので、ムリのない程度に継続することでより一層効果が期待できます。
PMSやPMDDによってふだんはできている家事などが思うようにできなくなり、イライラを募らせる女性は少なくありません。また、PMSやPMDDのつらさを周囲に理解してもらえないことによって、より一層イライラやゆううつな気持ちが強くなる人もいるようです。周囲に理解してもらえることが、つらさをやわらげる助けになるはずです。
がまんしないで医師に相談しよう
PMSやPMDDの症状は、程度の差はあっても多くの女性が感じるものです。だからこそ、周りの人にわかってもらえずにつらい思いをすることもありますよね。
セルフケアを試しても症状が改善しなかったり、ふだんの生活に支障が出るほどつらかったりする場合はがまんしないで病院を受診しましょう。話を聞いて理解してくれる人がいるだけでも、気分が変わることがあります。
生理前に仕事のやる気が出ず困っていたため、心療内科で相談してみたところ、生理前には誰にでも起こり得ることだと知った。PMSの症状が強く出る日はリモートワークにしたり、はやめに仕事を切り上げたりと、自分の体調をみてスケジュールを立てられるようになった。「生理前だから」と諦めていたこともできるようになって、うれしく感じている。
高校生のBさんは生理前になると周りの人にやつあたりすることが多かった。それに気づいたおかあさんから「生理前に薬を飲んで調子を整えることもできるよ」とアドバイスされ、自分がそのような状態だったと気づいた。その後、婦人科で話を聞いてもらったり、薬を処方してもらったりして、周りに「笑顔がふえたね!」と言われるようになった。
婦人科や精神科、心療内科の受診がおすすめです。また、産婦人科やレディースクリニックなどでも診療が受けられます。病院の受診は緊張しますよね。まずは自分が相談しやすいところを見つけてみましょう。同性の医師を選ぶのもいいかもしれません。最後に生理がきた日や生理周期なども受診前に確認しておくといいですね。
365日、「いつもの自分」でいることは思っているよりも難しいですよね。泣き出したくなるときも、やつあたりしてしまいそうなときもあってもいいのではないでしょうか。でも、そのせいで大切な人を傷つけてしまったり、自分の居場所がなくなってしまったりするのはとても悲しいことです。そうなる前に、ゆっくりと自分のからだやこころの声に耳をかたむけてみましょう。家族や友人、医師などに相談してみると、こころが少し軽くなりますよ。
PMS、PMDDについて知り、⾃分もそうかもしれないと思ったら、勇気をもって相談に⾏ってみること。それはとても⼤事なことだと思います。実際に治療をしたことで、⼤げさではなく「⼈⽣が変わった」と⾔う⽅もいるくらいです。この冊⼦によって、多くの⽅にPMS、PMDDの知識が広まり、⽣理前の不調に悩んでいる本⼈はもちろん、周りの⽅々も含めて、世界が明るくなるきっかけになるとよいなと思っています。
医療法人 円山公園メンタルクリニック
院長 白木 淳子