お薬と病気のなるほどライブラリ
病気についてのおはなし
高血圧について
高血圧とは?
高血圧とは、血管に強い圧力がかかりすぎていることです。
心臓はポンプのように血液に圧力をかけ血管へ送り出します。血液の圧力によって血管壁を押す力が「血圧」です。
この血圧が正常値よりも高い状態が続くことを高血圧といいます。
高血圧治療の大切さ
高血圧の症状は、頭痛や肩こり、めまい、息切れなど比較的軽く、自覚症状に乏しいのが特徴です。しかし、高血圧の状態を長く放置すると、自覚 症状がないまま徐々に合併症が進行して重大な病気になり、寝たきりになる患者さんも少なくありません。
慢性的な高血圧は、命にかかわる循環器の病気(脳卒中や心疾患など)を引き起こす原因へとつながります。そのため、収縮期血圧の4mmHg低下が国民の健康に対する目標として現在掲げられており、その目標を達成することで脳卒中の死亡率は男性8.9%、女性5.8%の低下が、また、虚血性心疾患の死亡率も男性5.4%、女性7.2%の低下が期待できるといわれています。
これらの病気の発症リスクを下げるためには、できるだけ早期から治療を開始し、血圧を適切に管理することが大切です。
厚生労働省「健康日本21(第二次)の推進に関する参考資料」より
あなたは高血圧?
診察室での血圧値*
収縮期血圧が140mmHg以上かつ/または拡張期血圧が90mmHg以上
家庭での血圧値*
収縮期血圧が135mmHg以上かつ/または拡張期血圧が85mmHg以上
収縮期血圧(最高血圧):心臓が収縮したときの血圧。血液が心臓から全身に送り出された、最も血圧が高い状態。
拡張期血圧(最低血圧):心臓が拡張したときの血圧。全身を循環する血液が心臓へ戻った、最も血圧が低い状態。
*医療機関で測定する血圧を「診察室血圧」、家庭で測定する血圧を「家庭血圧」と呼びます。
診察室血圧と家庭血圧の間に診断の差がある場合、家庭血圧による診断が優先されます
降圧目標値を知りましょう
治療の目標となる降圧目標値の例は以下の通りです。
降圧目標値の一例
75歳未満の成人 | 75歳以上の高齢者 |
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診察室血圧(mmHg) <130/80 | 診察室血圧(mmHg) <140/90 |
家庭血圧(mmHg) <125/75 | 家庭血圧(mmHg) <135/85 |
高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019), 2019, ライフサイエンス出版をもとに作成
患者さんの年齢や合併症の有無によって異なります。
降圧目標値については、かかりつけの先生に相談しましょう。
高血圧と診断されたら…
高血圧の治療は、「生活習慣の改善」と「薬物療法」が基本となります。
生活習慣の改善と薬物療法をどのように組み合わせるかは、患者さんの状態によって異なりますが、リスク(年齢や合併症など)の程度に応じた治療が行われます。高血圧と診断された方は、動脈硬化や合併症の発症・進展を予防するためにもこれらの治療を行い、血圧をコントロールすることがとても大切です。
家庭で血圧を管理しましょう
高血圧の患者さんにおいては、血圧が24時間にわたり適切にコントロールされているかどうかが大変重要です。
診察時に測定する「診察室血圧」だけでは普段の血圧がわからず、薬の有効性や持続時間が十分かどうかの判定が困難です。日々の「家庭血圧」を記録しておくことは、これらの評価に大変有用ですので、薬物治療や適切な治療にあわせて、日頃から血圧の変化をチェックするようにしましょう。
●家庭で血圧を測定しましょう
●お薬を忘れず飲みましょう
●血圧手帳を活用しましょう
診察室だけではわからない普段の血圧
医療機関で測定する血圧が、普段の血圧を反映していない場合があります。
白衣高血圧: |
通常は正常血圧であるのに、医療機関で白衣を着た医師や看護師を前にして血圧を測定すると、緊張して高血圧を示す状態をいいます。
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仮面高血圧: |
白衣高血圧の逆で、医療機関で測定すると正常値を示すにもかかわらず、医療機関外(家庭など)で測定する血圧は高値を示すことをいいます。
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早朝高血圧: |
通常、血圧は早朝から目覚める時間にかけて上昇しますが、起床時に急激な血圧上昇を示すことを「早朝高血圧」といいます。早朝は、脳卒中や心筋 梗塞などが発症しやすい時間帯であり、早朝高血圧がその原因のひとつで あると考えられています。
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夜間血圧: |
睡眠時の血圧を夜間血圧と呼び、下記のように分類されています。特に夜間非降下型と夜間昇圧型は、臓器障害ならびに心血管死のリスクが高い ため、注意が必要です。
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家庭血圧の正しい測り方
せっかく血圧を測定しても、正しい家庭血圧の測定方法でなければ正確な血圧は得られません。家庭で血圧を測る際は、以下のポイントを参考にしましょう。
朝と夜に測定しましょう
【朝】起床後1時間以内・朝食前・服薬前
【夜】就寝前
できるだけ同じ状態、同じ時間に測定します。
トイレを済ませてから測定しましょう
トイレを我慢していると、血圧は上昇することがあります。
1~2分安静にしてから測定しましょう
上腕用の血圧計を使用しましょう
●カフ(圧迫帯)をややきつめ(指が1~2本入るくらい)に上腕に巻きます。
●上腕をテーブルなどに乗せ、カフが心臓と同じ高さになるようにして測定します。
●1度に2回測定して、その平均を用います。
●原則として利き手の反対側で測定しましょう。ただし、血圧値に左右差がある場合は利き手側でも測定しましょう。
血圧手帳に記録しましょう
●日付、時刻、血圧、脈拍、メモ(血圧に影響を与える内容や気になる点)などを記録します。
●診察時、記録した血圧手帳を医師に見せ、気になることがあれば相談しましょう。
血圧は、心臓の拍動数(70拍動数/分×60分×24時間=約10万回/日)だけ存在し、時間帯や測定環境などにより変化するものです。多少の数値の変化に一喜一憂するのではなく、一定期間の推移を見守ることが重要です。 また、血圧が安定したからといって、ご自身の判断で服薬を中止したり、服薬回数を減らさないようにしましょう。
高血圧と日常生活~食生活・嗜好品編~
減塩を心がけましょう
(目標量:1日6g未満)
薄味に慣れましょう
●味付けは、「だし」や香辛料などを利用して風味豊かにするなど、食事の際のちょっとした工夫で塩分のとりすぎを防ぐことができます。
野菜・果物を積極的に摂取しましょう
●野菜や果物には血圧を下げる働きのあるカリウムが多く含まれています。
※重篤な腎臓病の人は高カリウム血症をきたすリスクが高いので、カリウムのとりすぎには注意が必要です。また、肥満者や糖尿病の人は、糖分を多く含む果物は食べすぎないようにしましょう。
不飽和脂肪酸を豊富に含む青魚などを積極的に摂取しましょう
不飽和脂肪酸を多く含む食品
●魚油を多く摂取することで、血圧を下げる効果が期待できます。
適正体重を維持しましょう
BMI [体重(kg)÷身長(m)2]=25未満を目標に!
●肥満は高血圧の重要な危険因子です。
●内臓脂肪の蓄積は高血圧を引き起こすため、日頃から腹囲(男性85cm未満、女性90cm未満が適正)にも注意しましょう。
●約4kgの減量で有意な降圧が得られることが知られています。まずは4kgの減量を目指しましょう。
お酒の飲み過ぎに注意しましょう
節酒の目安[エタノール換算]
男性:20-30mL/日以下
女性:10-20mL/日以下
●長期にわたる飲酒は血圧を上昇させてしまいます。
禁煙しましょう
●喫煙は癌や脳卒中など、さまざまな疾患の危険因子です。
特定保健用食品(トクホ)について
からだの生理機能などに影響を与える成分を含んでおり、特定の保健の効果が科学的に証明されている食品です(有効性や安全性の審査を受け消費者庁の許可を得ています)。その中には「血圧が高めの方に」適する食品があり、血管に良い働きをするものがあります。高血圧患者さんの場合、お薬と食品の相互作用に注意が必要であるため、使用したい場合は事前に医師・薬剤師に相談しましょう。
高血圧と日常生活~運動編~
適度な運動は血圧を下げる効果があり、高血圧の改善に効果的です。正しい運動方法を理解し、日々の生活習慣に上手く取り入れるようにしましょう。
●有酸素運動
有酸素運動は、全身を使い、酸素を多く取り込みながら行う運動です。できれば毎日30分以上(1回10分以上の運動の合計が30分となればよい)もしくは週180分以上を目標に行いましょう。
主な有酸素運動:ウォーキング、水泳、サイクリングなど
〈運動時の注意〉
●準備運動と整理運動を忘れずに行いましょう
●こまめに水分を補給しましょう
●無理のないペースで行いましょう
●運動中、少しでも身体に異常を感じたら、すぐに中止しましょう
高血圧予防のためのウォーキング方法
●のんびりとリラックスして歩く
●腕はだらりと下げ、自然に振られるようにする
●歩幅は普段より10cmほど狭めて、長めに息を吐くように心がける
寒い日は、暖房のきいた地下街やショッピングモールでウォーキングするなど、その日の天候や体調にあわせて、無理せず行いましょう。
●無酸素運動
無酸素運動は、瞬間的に力を入れる運動です。
この運動は、急激に血圧を上昇させるため、高血圧の方はできるだけ避けるようにしましょう。
運動療法をはじめる前に、必ず医師に相談しましょう!
運動によって、病状が悪化してしまうこともあります。特に高リスクの高血圧患者さんの場合は、運動によって心臓発作や脳卒中を起こすなど、命にかかわる危険性もあります。運動療法は、医師と相談の上ではじめましょう。
公園前薬局(東京都)薬剤師 堀 美智子 先生