病院薬剤師による在宅医療緩和ケアチームへの後方支援の取り組みについて、その始まりと背景についてお伺いします。 小林: 私は6年前にとくひさ中央薬局に就職し、在宅医療での貢献を志しました。中でも患者さんが最期まで在宅で適切な医療とケアを受けられるよう、緩和ケアに関わりたいと考えていました。しかし、当時の私には緩和ケアの専門知識も経験も不足していたので、2013年に経験豊富な金沢赤十字病院の枝廣先生に教育的支援をお願いしました。枝廣先生は大学院、また緩和薬物療法認定薬剤師としても先輩であり、以前から顔見知りでしたので、依頼しやすい状況にありました。 小林星太 先生 枝廣: 小林先生の依頼を受けて、私もぜひ取り組みたいと思い、挨拶がてら薬局にも出向きました。病状が刻々と変化し、予想通りにいかない緩和ケア領域は「難しい」と敬遠されがちです。最近増えてきたとはいえ緩和ケアに精通する医師は限られていますし、対応できる薬局も少ないのが現状です。その中で私は、緩和ケアに携わる医療従事者を一人でも増やしたいと考えています。また薬薬連携はこれからの重要な課題ですので、とても良い機会だと思いました。 枝廣茂樹 先生
取り組みの概要と評価についてお伺いします。 小林: まず、緩和ケアが必要な患者さんの退院時カンファレンスに薬局薬剤師を含め、医師、看護師などで構成された地域在宅緩和ケアチームのメンバーが参加しました。そのとき病院薬剤師より、詳細な情報をご提供いただきました。在宅へ移行してからは、元々在宅緩和ケアチームが情報共有に活用していたSNS(social networking service)に病院薬剤師の枝廣先生にも入っていただきました。SNSは誰かに言い忘れるということなく、全員が同じ情報を共有でき、経過に合わせた治療方針を決定するのに役立つツールです。枝廣先生からは随時、アドバイスや処方提案をいただき、私自身のスキルアップと緩和ケアの質の向上につながりました。病院薬剤師の先生に在宅医療の現場を知っていただく良い機会にもなったと思います。 枝廣: 後方支援の立場ではありましたが、現場を見ておきたいと思い、1症例に付き、2度ほど患者さん宅へ訪問させていただきました。印象的だったのは、患者さんも家族も含め、とても和やかな雰囲気の中で医療が行われていることでした。一方、医療者としては非常にチームワークが取りやすく、情報提供もしやすい現場だと思いました。 SNSを活用した情報共有については、きめ細やかなやりとりができ、患者さんがやむなく再入院された時も、在宅での症状や処方薬の経過が分かり易いことに大きな利便性を感じています。