薬剤師の視点からみた、病院と在宅での緩和ケアの違い、留意点などは? 枝廣: 病院では、入院患者の疼痛コントロールに対して医療従事者の目が行き届きます。しかし在宅では、患者さん自身やご家族に委ねる部分が大きくなり、症状を把握するためにも、きめ細やかな副作用モニタリングが必要となります。また注射剤のデバイスの切り替えが必要であったり、病院と同じ薬が使えないケースもあり、これらの調整は退院時カンファレンスで行うのがベストだと考えます。そして在宅に移行した後も困った事があったら私どもに気軽に相談していただきたいと思っています。 小林: 私の経験では、退院時カンファレンスにおいて薬の情報が議題に挙がらないことが少なくありません。できれば事前に病院薬剤師に連絡して薬剤の一覧をいただく等、準備をしておくのが望ましいと思います。医療用麻薬の自己管理では、痛みに対して過剰反応する人や逆に我慢し過ぎる人など様々な要因でトラブルが発生します。トラブル防止のためには状況把握のための密な連携が欠かせません。在宅での留意点は表1の通りです。最後に書いていますように、知識や経験に不安があれば、外部支援を受けることを強くお薦めします。私の場合、枝廣先生からの教育支援は一通り目標に達したと考え、今はメールや電話での相談になりましたが、他にも、全国薬剤師・在宅療養支援連絡会(JHOP)に入会し、メーリングリストでいつでも全国の薬剤師に質問できるようにしたり、日本緩和医療薬学会の学術集会に参加して最新の情報を収集するなど、在宅患者さんに最善の薬物療法が提供できるよう努めています。 <表1> 在宅における緩和ケアに携わる薬剤師の留意点 退院時処方の管理は、患者や家族の大きな負担になりやすいので、早期に訪問し薬剤管理支援を開始する。その際、患者の希望、性格、能力、これまでの患者独自の管理方法などを十分アセスメントし、一緒に考えるようにする。(薬剤師のやり方を押し付けない) 終末期がん患者では、症状や全身状態が急速に変化するので、他職種との十分な連携の上、薬剤師独自の視点から対応する。 医療用麻薬の副作用に対しては、きめ細やかなモニタリングとアセスメントで対処する。 患者の入退院時には、病院薬剤部との連携が重要。例えば入院時には、トレーシングレポートなどを活用して、在宅での薬剤管理方法、麻薬の使用状況、症状マネジメントの状況などを報告する。 医療用麻薬の備蓄は、医療機関との連携を通じて担当患者の情報を事前に収集することで可能になる。最近は少量包装の製品や後発品があり、不良在庫のリスクも軽減できる。 指導管理に不安があれば、経験豊富な仲間とつながり、気軽に相談できる体制を作ると良い。