愛媛県が薬薬連携に注力されている背景をお聞かせください。 荒木: 背景としましては、もともと全国と比べ、愛媛県下の院外処方箋率が低かったということがあります。今でも院外処方箋を出していない基幹病院もあり、パーセンテージは全国平均以下が続いています。しかし、病棟薬剤業務実施加算も付き、病院薬剤師の職能が拡がるにつれて、院外処方が進むと予測されます。一方で、愛媛県病院薬剤師会と愛媛県薬剤師会は、人と人の交流ができており、連携しやすいという土壌がありました。そのような中で、患者さんの薬物治療のためには、「薬薬連携は、早急に推進しなければならないテーマである」との共通の認識を持ち、2年ほど前から本格的に取り組み始めました。
実際、どのような連携を推進しておられますか。 荒木: 身近なところで言いますと、私どもの愛媛大学医学部附属病院薬剤部と門前薬局の古川先生のあい薬局では、綿密な連携をとっています。例えば、当院ではメーカーによる新薬説明会を月に1回開催していますが、必ず、古川先生のところからも薬剤師さんが参加されます。他の門前薬局も参加されており、どの薬局からも来ていただいて良いのですが、現実問題、地理的に距離の離れた薬局薬剤師の方が来られることは難しい状況です。たぶん、他の施設でもこうした取り組みは個別にされているのではないかと推察しています。 また、保険薬局への情報提供として処方箋の横に「お薬伝言板」を設け、処方医から保険薬局薬剤師へのコメント、逆に保険薬局薬剤師からのコメントを書き込める欄を作っています。その上には検査値14項目を情報提供できるようにしました。医師及び薬剤師からのコメントは、薬剤部クラーク(事務担当者)に入力してもらい、それを電子記録として残せるようにしています。 特に外来化学療法においては、経口抗がん剤治療の有効性と安全性を担保するために、保険薬局の先生方の協力が欠かせません。さらに、私どもでは、抗がん剤副作用モニタリングシートを作成し、これをHPで公開して活用を促しています。疼痛・緩和ケアなどにおいても同様のシートを公開しています。門前薬局の古川先生には積極的に活用していただいておりますが、これを門前以外の薬局にも活用していただくようにすることが課題だと考えています。 荒木博陽 先生
古川: 抗がん剤副作用モニタリングシートは、薬剤ごとに分かれています。その薬剤が処方された患者さんにヒアリングしながら、私どもがチェックし、「お薬伝言板」に貼り付けてFAXコーナーを介して病院へフィードバックする、それが病院のカルテにも反映される仕組みになっています。これは、患者さんの薬物療法の経過が記録されると言う意味でも非常に有用だと思います。さらに愛媛大学では、災害時に役立つ災害マニュアルを作成し、公開してくださいました。マニュアルは、災害が起きた時に糖尿病、心臓病、腎臓病など疾患を持った患者さんがどうしたら良いかがわかるようになっています。これらをダウンロードして、患者さんのお薬手帳に貼って活用するわけですが、とても役立つツールだと思います。 古川 清 先生 お薬手帳