薬薬連携はどこまで進んでいるか
NIPRO

2014年11月掲載

vol.02

宮城県 仙南地区

キーワード
仙南地区在宅ホスピスケア連絡会  退院時共同指導  マニュアル  包括ケアシステム
対談者
佐藤益男 先生

みやぎ県南中核病院
薬剤部長
佐藤益男 先生

瀬戸裕一 先生

宮城県薬剤師会副会長
有限会社メディファル
代表取締役
瀬戸裕一 先生

仙南地区の医療圏の特色と地域全体の薬薬連携の状況についてお教えください。

佐藤:
仙南地区の医療圏は2市7町村で、みやぎ県南中核病院と公立刈田綜合病院の二つが300床以上の急性期病院として位置付けられています。地域全体としての薬薬連携の取り組みは、今後の課題であり、今は、各病院で、独自に薬薬連携を行っている状況です。まずは、病院同士のつながりをつくることが先決ではないかと考えています。
仙南医療圏…白石市,角田市,刈田郡,柴田郡,伊具郡
佐藤益男 先生

佐藤益男 先生

瀬戸:
平成24年3月末の住民基本台帳によると、仙南医療圏の人口は、18万2537名。このうち、65歳以上が4万8249名、高齢化率でいうと26.4%になります。県の平均が22.5%ですから、やはり高齢化が進んでいる地域といえるでしょう。高齢化率は、年1%ずつくらい上がっていますので、現時点ではもっと高齢化率は高いと思います。
薬薬連携に関しては、佐藤先生のおっしゃる通り、病院ごとに連携の度合いはまちまちです。私は、がん患者さんの在宅医療チームの中で、訪問薬剤管理指導を行っていますが、みやぎ県南中核病院が出来る前は、がんセンターの患者さんを在宅に受け入れていました。当地域では平成11年に「仙南地区在宅ホスピスケア連絡会」が立ち上がり、終末期のがん患者さんのケアを在宅医療チームで行い、住み慣れた家で最期まで過ごせるしくみができています。私は、立ち上げ当初からその一員として活動させていただいており、この中で薬薬連携が成り立っています。
瀬戸裕一 先生

瀬戸裕一 先生

みやぎ方式と呼ばれる在宅ホスピスのしくみですね。
このしくみはどのようにしてつくられ、また、薬薬連携はどのように成り立ったのでしょうか。

瀬戸:
「仙南地区在宅ホスピス連絡会」は、仙南保健所が中心になって立ち上がり、行政の先導で、チーム編成が行われました。その中で薬剤師は、療養中の薬物の管理から亡くなられた後の回収まで、トータルに関わります。薬のこと以外にもホスピスの場合は、薬剤師も含め、各職種が患者さんやご家族のお話を傾聴し、寄り添う医療を重視しています。当初、連絡会に入っている病院は、名取市にあるがんセンターでしたが、みやぎ県南中核病院が出来てからは、こちらにシフトしました。がんセンターは仙台医療圏に変わったからです。
佐藤:
当院は平成14年8月に開院したのですが、薬薬連携が始まったのは3,4年たってからだと思います。きっかけは、私が、宮城県病院薬剤師会からの指示で、宮城県薬剤師会に理事として入れさせていただいたことにあります。県薬に入って初めて保険薬局の先生方とコミュニケーションがとれるようになり、当院の勉強会に参加を呼び掛けるようになりました。また、その頃から病棟業務を始めるようになるとともに、退院時共同指導も開始し、連絡会にも入れていただきました。
瀬戸:
佐藤先生と知り合ってから、退院時共同指導に私も参加させてください、とお願いしました。退院時共同指導は、がん患者さんの「追い出される、見捨てられる」という感覚を排除できるのではないか、と私は感じています。患者さんを前にして、病院薬剤師と薬局の薬剤師との情報を共有する姿が、「何かあったらいつでも病院に戻れる」といった安心感と信頼感を患者さんにもたらすのだと思っています。
「仙南地区ホスピスケア連絡会」の仕組み図

「仙南地区ホスピスケア連絡会」の仕組み図