薬薬連携はどこまで進んでいるか
NIPRO

2016年9月掲載

vol.04

福島県 会津地区

キーワード
薬薬連携協議会  お薬手帳  研修会  東日本大震災
対談者
塩川 秀樹 先生

福島県病院薬剤師会 会長
竹田綜合病院 薬剤科長
塩川秀樹 先生

下山田 博久 先生

会津薬剤師会 会長
下山田博久 先生

薬薬連携協議会の組織とその後の活動についてお教えください。

塩川:
薬薬連携協議会は、竹田綜合病院の薬剤科に事務局をおき、組織は、大委員会と小委員会に分かれています。大委員会は、3つの基幹病院と積極的に参加いただける病院の薬局長クラス、および核となる薬局薬剤師数名で成り立ち、その下の小委員会は、お薬手帳作成後に3つのグループに分け、各グループに1基幹病院の薬剤師と調剤薬局の薬剤師を振り分けています。小委員会は若い人が多く、やる気のある方なら原則誰もが参加できます。現在の活動の中心は、年3回、開催される研修会の企画立案と運営で、小委員会の各グループが順番に受け持ちます。最初の研修会は、「お薬手帳の使い方」がテーマでしたが、その後の研修会の内容は、薬剤師たちによるスモールディスカッションを中心とし、場合によっては医師等の講演なども組み込まれます。参加者には事前にテーマが告知され、各人、意見を考えておかなければならず、飛び入り参加はできません。その分、下準備が必要ですので、小委員会は毎月、開かれています。
下山田:
小委員会のメンバーは、立ち上げ当初、病院薬剤師が多かったのですが、今は薬局薬剤師も増え、半々位になっています。私は、受講生として研修会に参加させていただきましたが、非常に内容が濃くて面白いと感じています。検査値の見方、抗がん剤の副作用防止など、病院薬剤師の目から見た情報も大変役に立ちます。特別講演の先生にもテーマが良く練られていて、レベルの高い勉強会だと評価いただいたことがあります。何よりも顔が見える関係になれることは大きなメリットです。

これまでの活動の成果や評価について、お聞かせください。

塩川:
「顔の見える関係づくり」を目標の一つに掲げてきましたが、その成果は、病院の薬剤科に相談が入ってくるようになったことにも表れていると思います。以前は、病院の薬剤科に対して、開局の先生方は「敷居が高い」と言う表現をされており、外来への疑義照会のみで、薬剤科へのコンタクトはありませんでした。今は、電話をいただくことも増え、困ったときに頼っていただけるようになってきたと思います。一方、お薬手帳に関しては「會津お薬手帳を使って患者さんの意識がどう変わったか」をテーマに共同研究を始めており、その結果をもとに改訂を考えていくつもりです。
下山田:
大手薬局のチェーン店などでは、会社で使っているお薬手帳が優先される場合も多いようですが、上司と掛け合って、「會津お薬手帳」を使う許可を得た店舗も出てきました。喜多方歯科医師会からも問い合わせがあり、薬剤師だけでなく、地域の医療従事者に認知されつつある、と感じています。さらに医療職だけでなく介護職、在宅も含めて患者さんの医療系情報のツールとして広げていくことができると期待しています。

課題については、どのようにお考えですか。

塩川:
医療施設間の考え方の格差を無くしていく必要があると思います。当地区は、医療資源が十分ではありませんので、日常の業務に追われがちです。一方で、やりたいことは沢山あります。それをどこまでやるのか。忙しいから無理だと思ってしまうと停滞してしまいます。皆が常に前向きに次のステップを踏み出そう、と考えることが大切なのです。幸い、小委員会には、5年目になる今も新しい人が参加してくれています。その活気を持ち続けられるように考えていかなければなりません。これまでは全くの手弁当で運営してきましたが、昨年から病院薬剤師会会津支部と会津薬剤師会が折半でお金を出し合い、予算を確保しました。潤沢とはいえませんが、一歩ずつ前進しています。また、病院側としましては、昨年から地域の医師会や歯科医師会、行政との連絡を取り合うようになりましたので、これを継続していきたいと考えています。
下山田:
薬局側としては、「會津お薬手帳」への記入内容を深めていくことが課題の一つだと思います。具体的には、アセスメントやメッセージ欄に何を書いていいのか分からない、という人もいるのですが、例えば、患者さんが病院で言えなかったことをヒアリングしたら、その内容を記入するなど、きめの細かい情報共有が出来るようにしたいと思います。そのためには、時間の確保も必要になってきます。また、転勤などで異動がある薬局も少なくありませんので、「會津お薬手帳」をテーマにした勉強会を定期的に開く必要もあるかと思います。使い方はもちろん、最初に「會津お薬手帳」を作成したときの薬剤師の熱い気持ちを伝えて、活路を広げたいですね。