薬薬連携はどこまで進んでいるか
NIPRO

2014年11月掲載

vol.02

宮城県 仙南地区

キーワード
仙南地区在宅ホスピスケア連絡会  退院時共同指導  マニュアル  包括ケアシステム
対談者
佐藤益男 先生

みやぎ県南中核病院
薬剤部長
佐藤益男 先生

瀬戸裕一 先生

宮城県薬剤師会副会長
有限会社メディファル
代表取締役
瀬戸裕一 先生

情報提供は具体的にどのようにされていますか。

瀬戸:
「仙南地区在宅ホスピスケア連絡会」の世話人会ではマニュアルを作っており、その中に双方向の情報交換のためのツールが用意されています。例えば薬局から病院薬剤部に報告する場合は、訪問薬剤管理指導報告書や在宅患者薬剤情報連絡票、病院薬剤師から薬局へは、診療情報提供書、訪問薬剤管理依頼書などを使うことになります。東日本大震災後は「もしものとき」用のマニュアルも作りました。その中には、患者情報の共有を目的に、お薬手帳よりも詳しい医療情報を記録できる「わたしの手帳」があります。これらは、仙南保健所のHPで公開されており、ダウンロードできます。


佐藤:
当院では昨年度より、在宅に限らず、がん患者さんを対象に、保険薬局の先生方にがんの種類と抗がん剤のレジメンの情報を提供するようになりました。そして今年は、検査データを提供することにしました。その過程は、3,4年前、抗がん剤と麻薬を院外処方で出すようになったことに始まります。処方箋を出すにあたって、勉強会を開催したのですが、50名くらいの保険薬局の先生方が参加され、関心が高いことがわかりましたので、その後、県の事業として勉強会を継続しました。内容は当院のがん治療やケアについて、医師をはじめとする多職種に話してもらうというものです。私は、がん治療に限らず、患者さんが安心して医療を受けるためには、薬剤師の知識レベルを底上げし、共有された情報を生かすことが大切だと考えています。
訪問薬剤管理指導報告書

訪問薬剤管理指導報告書

※「仙南地区における在宅ホスピスケア患者受け入れのための手引き」より

がん治療以外の薬薬連携についてはいかがですか。

佐藤:
病院では、病棟業務が充実してはじめて、伝えるべき情報が得られ、薬薬連携の真価が発揮できるのではないかと考えています。退院時共同指導にしても、病棟業務が出来ていないと、処方箋に書いてある内容以上のことを伝えたくても情報が無い、ということになるでしょう。瀬戸先生と退院時共同指導を始めた頃は、まだ全病棟に薬剤師を配置しておらず、化学療法と緩和ケアを担当する薬剤師が、共同指導にあたりました。しかし、平成21~2年くらいから本格的に全病棟における病棟業務を展開するようになり、今は病棟薬剤業務実施加算も算定していますので、これからがん患者さん以外でも情報共有の充実に取り組みたいと思います。例えば、循環器系を患っている患者さんの場合、入院中に薬が変更された後に退院されることがあります。しかし、薬が元に戻されたり、コンプライアンスの問題が原因で、また入院されることが散見されます。もし、先の入院中の情報、例えば薬が変更になった理由や過程、患者さんが、自分できちんと薬の服用ができていたかどうか等の情報が薬局に伝わっていれば、回避できたかもしれません。退院時に薬局の先生方に来ていただくのは難しくても、「仙南地区在宅ホスピスケア連絡会」の情報提供ツールのようなものを活用して、入院中のイベントを伝えることができれば、と考えています。
瀬戸:
「仙南地区在宅ホスピスケア連絡会」は、今、国が推進している地域包括ケアシステムに近い活動をしています。これをがんだけでなく、他の在宅療法の患者さんにも適用できるようにした方が良いのではないかと思います。せっかくスムーズな連携を実現できているシステムですので、これを核にして、がん治療だけでなく、他の疾患の治療に携わる医療従事者も入れるようにし、仙南地区の包括ケアシステムへと育てていければ、と考えています。