2014年8月掲載
愛媛県
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- お薬伝言板 お薬手帳 勉強会 一颯会 施設間薬剤情報連絡書
薬薬連携の取り組みについて、その評価と課題をお聞かせください。
- 古川:
- 薬局側から見ると情報量が増えたことが有難いですね。患者さんの病気に関する情報、薬に関する情報、それから病院における患者さんを取り巻く環境や入退院の流れなどのシステムに関する情報を病院から出していただけるようになってきました。それらは、ケアを必要とする患者さんをピックアップするのに役立ち、服薬指導の充実や患者さんとの信頼関係を深めるのにも役立ちます。一方で、連携の相手が薬剤師であることも重要です。理由は、適切な薬物治療のために介入する必要があるとき、やりとりする相手が薬剤師だとニュアンスが伝わりやすいからで、これは大きなメリットだと思います。
- 荒木:
- 薬薬連携のあるべき姿を考えた時、患者さんを中心に、在宅医療や介護も含めたトータルな地域医療がスムーズに実現できるようなシステムが必要だと思います。介護の現場にまで介入できるのは、薬局薬剤師ですし、患者さんを在宅医療や介護へ送り出すのは病院薬剤師ですから、古川先生のおっしゃるように薬剤師同士のつながりはとても重要です。今後の課題としては、退院時カンファレンスで、病院薬剤師、薬局薬剤師が同席し、情報共有することだと考えています。また将来的には電子カルテを活用して、病名が閲覧できるようにしていきたいですね。
薬局から病院へ、また病院から薬局へ、お願いしたいことはありますか。
- 古川:
- 今、電子カルテの活用のお話がありましたが、他県では、ネットワークを作ってその中で、病院のカルテの一部を閲覧できるようなシステムも稼働しています。ぜひ松山市でモデルケースを作っていただけたら、と思います。それから新しく、松山大学のクリーンベンチが設置されている場所を借りて、無菌調剤の勉強会がスタートしたことが、県下の薬剤師にアナウンスされました。今後、継続される予定ですが、薬局としては、こうした病院薬剤師がもっているノウハウや知識を色々と教えていただけると有難いですね。
施設間薬剤情報連絡書
- 荒木:
- 病院側からは、今、薬局薬剤師の先生方に患者さんの服用薬情報をいただけるよう、依頼書(施設間薬剤情報連絡書)を配付したところです。その背景には、入院患者さんの持参薬チェックに、病院薬剤師が相当な時間を割かれているという現状があります。もし、患者さんの入院前に、薬局から服用薬情報をいただければ、それらの業務が省力化でき、病院薬剤師業務は、処方設計などもっと踏み込んだ業務にシフトできるでしょう。当院では、総合診療サポートセンター(TMSC)という入院予定患者さんのオリエンテーションや持参薬チェックなどを行うチームがあるのですが、ここを窓口にして、入院される患者さんに対して事前に服用薬情報を収集したいと考えています。持参薬問題は、病院にとっても重要ですので、医師会の協力も得ています。
最後に薬薬連携に対しての抱負とメッセージをお願いいたします。
- 荒木:
- 薬薬連携は、患者さんのためになることはもちろん、薬剤師の職域を拡げる鍵にもなります。情報が少ないがゆえに時間をとられていた業務が省力化でき、薬剤師としての本来の職能を生かせる、踏み込んだ薬物治療への介入を可能にすると思います。そのことを理解いただき、多くの薬剤師の方に私どもが企画するデバイスの講習会など、薬薬連携に参加していただければと思います。抗がん剤にしても、扱っていない薬局も少なくありませんが、様々な情報を公開していきますので、ぜひ知識を身に付けて、安全に扱っていただきたいですね。そして、病院、薬局の両方で、薬剤師としての職能を生かして、患者さんの治療により貢献できるよう、お互いに切磋琢磨していきましょう。
荒木先生と古川先生
- 古川:
- 私どもは愛媛大学医学部附属病院の門前薬局ですので、非常に自然体で病院薬剤師との連携ができていますが、県下を見渡すと温度差があるようです。私は、薬薬連携推進のためには、病院、薬局ともに薬剤師の意識を高めていくことが重要だと思っています。院外処方が進むにつれて、お互いの業務についておおよそ分かり合えて来たと思いますが、まだまだ知らないことが多い。ですから、薬局薬剤師向けの講習会などを増やしていただき、薬局側は積極的に参加していただきたいと思います。そして、荒木先生がおっしゃった、病院、診療所、薬局、介護も含めた地域医療をより良くするにはどうすればいいかを考えながら、一歩一歩前に進んでいきたいと思います。