薬薬連携はどこまで進んでいるか
NIPRO

2019年3月掲載

vol.06

岐阜県 岐阜市

キーワード
検査値情報の活用  疑義照会の簡略化  薬薬連携研修会  薬薬連携代表者会議

<前段右から>

安田公夫 先生 (岐阜赤十字病院
医療社会事業部・薬剤部顧問、岐阜市薬剤師会常務理事)

大橋哲也 先生 (岐阜市薬剤師会会長)

<後段右から>

木村繁和 先生 (岐阜赤十字病院 医療安全係長)

林 貴子 先生 (岐阜赤十字病院 薬剤副部長)

栗本秀文 先生 (岐阜北地区 薬剤師会代表・岐阜市薬剤師会副会長)

蓮田明文 先生 (ピノキオ薬局忠節店 岐阜市薬剤師会在宅委員)

増田千穂 先生 (たんぽぽ薬局早田店 薬局長 管理薬剤師)

平松秀昭 先生 (あかつき薬局 薬局長 管理薬剤師)

薬薬連携推進の成果とメリット

検査値活用、薬薬連携代表者会議については門前薬局の先生方より、疑義照会の事前合意については岐阜赤十字病院の先生方より、成果やメリットをお話いただきました。第51回日本薬剤師会学術大会でも増田先生が「検査値の活用」(表2)、平松先生は「事前合意の運用状況」(表3)について、それぞれ発表されています。

増田:
処方箋に検査値が記載された当初は、患者さんとの会話において検査値を話題にしたり、検査値で腎機能をみるという認識は持っていたのですが、処方監査にまで結びつけることが出来ていませんでした。2017年2月の研修会時に木村先生が、3薬剤の処方監査の事例などを分かり易く提示されことで、薬局内のスタッフに活用法が認知され、取り組みへの意欲が高まりました。さらに毎月の代表者会議でも活用の具体的な話が出る中で、検査値から処方を確認するという姿勢が浸透していったと思います。
増田千穂 先生

増田千穂 先生

<表2>


    岐阜赤十字病院薬剤部から
    提案された3薬剤の具体的な検査値情報活用法

    薬剤名 検査項目 確認項目
    チアマゾール WBC
    Neutro
    Seg
    好中球数から無顆粒球症、定期的な検査実施の確認
    レボフロキサシン Cre Ccr算出、腎機能評価、投与量確認
    ファモチジン Cre Ccr算出、腎機能評価、投与量確認

*増田先生が日本薬剤師会学術大会で発表された「処方箋検査値活用の取り組み」によると、検査値情報活用事例は2017年10月-2018年4月において全疑義照会件数720件のうち23件。「処方変更による処方適正化を図る積み重ねが薬剤師職能の確立につながる」と考察されている。

平松:
門前薬局と病院は、こんなに距離が近くても何でも聞けるわけではありませんでした。例えば、発売中止になる薬剤の採用期限などは、薬局の在庫管理に関わる問題ですので重要な情報です。しかし日常業務の中で質問するのには躊躇がありましたので、毎月顔を合わせる機会ができ、気軽にお聞きできる関係性ができたことはとても有難いと思います。また、代表者会議は貴重な情報共有の場であり、他薬局の疑義照会の内容等、事例が提示される中で多くを学ばせていただいています。疑義照会に関する事前合意事項については、当薬局で毎月一定数の利用がありますし、事前合意5項目の中で最も利用している「内服先発調剤時における薬剤料の増減に関わりなく行う規格変更」に関しては、2018年2月~10月の期間で当薬局にて86件利用し、規格変更により43,318円の薬剤料が減少していました。事前合意事項の利用による医療費削減も、薬薬連携がもらたした成果だと実感しています。
平松秀昭 先生

平松秀昭 先生

<表3>


    疑義照会簡略化のための事前合意事項

  • 1)一般名処方において、先発品調剤する場合の内服薬剤形の変更
  • 2)内服先発品調剤時における薬剤料の増減に関わりなく行う規格変更
  • 3)後発品銘柄処方時に先発品調剤を希望される場合の一般名処方への変更
  • 4)保険請求可能な一包化
  • 5)ヒルドイドクリーム0.3%単剤処方時にチューブ単位での調剤への用量変更

*平松先生が日本薬剤師会学術大会で発表された「疑義照会件数と疑義照会内容の変化」によると、2018年2-10月における合意事項の総利用数116件のうち、7割以上は2)であった。「合意事項の利用により、調剤の効率化、服用錠数の減少、薬剤の保存の質向上が実現した」と考察されている。

木村:
事前合意の取り決めにおいて、薬局側のメリットは、無駄な疑義照会の時間が減る分、対人業務が充実すること、病院側のメリットは医師の負担軽減につながることだと思います。合意事項を含む疑義照会の報告件数は横ばいですが、実際医師に照会した件数は右肩下がりの傾向になっています。
安田:
病院側が患者さんに良かれと思って行うことが、本当に最適かどうか、それは薬局の先生方との連携の中で明らかになるケースも少なくありません。疑義照会の事前合意もその一つで、無駄な疑義照会を減らし、患者さんの治療により集中して安全性を高める、それが最終的な目標です。薬局の先生方や病院の医師の負担が減ることは、患者さんのメリットにつながることなのです。