2015年8月掲載
北海道 札幌市
- キーワード
- 検査値 疑義照会 多段階方式 病診薬連携
北海道大学では、教育機関としても広域の薬薬連携に取り組もうとされていますね。
- 井関:
- すでにいくつかの国公立大学病院で導入されている薬剤師レジデント制を当院でも導入しようと準備している最中で、その中に薬薬連携のトレーニングを組み入れたいと考えています。例えば、北海道では、薬剤師は1名しかいないという小規模病院があり、その薬剤師の定年時に応援の依頼がくることも少なくありません。そんなとき、3ヵ月単位でレジデントの薬剤師を派遣する。4人いれば、1年間、マンパワーが提供でき、その間に薬剤師を探してもらうこともできます。一方、派遣された薬剤師にとっては、一人薬剤師であることから、オールマイティに業務をこなす必要がありますので、とても良い勉強になると思います。
もう一つ、北海道薬剤師会と協働し、同会が設置した無菌調剤ができる5つのモデル薬局を対象に、インターネットの動画配信システムを利用して、無菌調剤の講習会を行いました。こうした動画配信システムは、院内で開催している勉強会でも活用し、近隣薬局だけでなく、さらにエリアを広げられないかと試みているところです。
最後に、薬局、病院それぞれのお立場で、課題および、あるべき姿について、お考えをお聞かせください。
- 坂田:
- 私は、病院との関係がもっと緊密になることを望んでいます。専門薬剤師の資格取得の状況をみてもわかるように、知識を得るという面では、病院薬剤師の先生方が一歩先におられますので、日常で疑問に思ったことを直に尋ねることができる関係がベストだと思います。個人的には、親しい先生がいて、メールで尋ねていますが、仕組みとしては、年に4回の勉強会以外は、つながりがありません。薬薬連携をさらに進めるためには、薬局側からどうアプローチしていけるか、私たちが何を発信できるか、が課題だと考えています。急性期病院に入院される方の多くは、通院や在宅の期間があり、薬局が持っている情報も少なくありません。それらが活かされる場面もあるはずなのですが、薬局側は、誰が入院したかも掴めていないのが現状です。今後はひとり一人の患者さんの情報をどのように共有していくかを考えていく必要があると思っています。
また、北海道大学病院とは、互いの理解が深まりつつあると思いますが、それ以外では、隔たりがあるようです。例えば、薬局は経営重視のもうけ主義と思われていることが多いと感じるのですが、意識も高く、熱心に勉強している薬剤師もたくさんいます。そうした志のある者同士が、立場を超えて、同じ医療チームとして患者さんの治療にあたることができれば、薬剤師の地位も向上すると思います。まずはお互いを理解することが大切ですね。
坂田先生と井関先生
- 井関:
- 病院薬剤部としては、門戸を開放しているつもりなのですが、大学病院でもあり、少し敷居が高く感じられるのかもしれません。しかし、ようやく同じテーマで話し合う機会ができ、相互の情報交換も行われつつあります。これからさらに、レジメン等の情報開示を進めていけば、関係性も深まり、互いに疑問に思ったことを聞けるようになるでしょう。それには、まだ少し時間がかかると思っています。
ところで、これまで、薬剤師は一般に「薬の専門家」と言われてきました。しかし最近、厚生労働省は「薬物療法の責任者」という言い方をするようになってきました。私もまさしく同感で、薬剤師は、「薬物治療に関して責任をとる」という意識を持つことが求められていると思います。互いに共通する患者さんがいて、自分達が、その方の薬物療法の責任者であることを意識すれば、おのずと連携も進むでしょう。このような言葉が登場してきたことは、薬剤師にとって、患者さんにこれまで以上に認められるチャンスではないでしょうか。このチャンスを逃さないためにも薬局、病院の立場を超えて、同じ薬物治療の責任者として、手をつないでいくことが大切だと思っています。