副薬剤部長、樋口 則英先生に訊く チーム医療の全体像
業務体制と病棟業務
当薬剤部では、病棟業務を担当する薬剤管理指導室をはじめ、調剤、注射薬、麻薬、製剤、製品試験・研究、臨床研究センター、薬務管理に分かれ、それぞれ専任の薬剤師を配置しています。病棟業務は24病棟に対して、薬剤管理指導室員22名を配置していますが、多くの薬剤師に病棟業務を経験して欲しいという考えから、他の業務を行っている薬剤師も兼任という形で病棟業務を行っています。体制は、病棟専任薬剤師4~5名を1グループとし、1グループで4~5病棟を担当するグループ制です。基本的には、各病棟専任薬剤師が担当する患者さんを定めていますが、病棟専任薬剤師だけでなく兼任の薬剤師もサポートしますし、多くの目で患者さんを視ることができるように協力体制を敷いています。1病棟の患者数は、45名前後ですので、病棟専任薬剤師1名の担当患者数もそのくらいになります。
業務内容は、持参薬の鑑定から、薬物治療の管理、処方提案、処方設計まで、医薬品に関わること全てになります。医師や看護師のニーズがそこにあり、要望を受けて、病棟業務に携わる薬剤師が増えていったという経緯がありますので、薬のことは薬剤師に任せてもらうことは、自然の成り行きでした。そのような中で、病棟薬剤業務実施加算の算定を取るための週20時間をクリアすること自体は、難しいことではないのですが、患者さんのケアを充実させるために、もう少し人数が欲しいと思っています。
様々なチーム医療の活動
当院においては、感染、NST、緩和、救急、がん、糖尿病、褥瘡、HIVなどのチーム医療が展開され、それぞれに専門性の高い薬剤師が配置されています。
いくつかご紹介しますと、感染の分野では、感染制御教育センターの中でチーム医療が行われており、専任1名と他7名の薬剤師が関わっています。活動の中心は、当院における感染制御の実施と教育です。定期的なラウンドによって、現場で感染制御がきちんと行われているかをチェックし、不備、不足があればこれに対して指導するほか、全体セミナーによる教育など、きめ細かな対応をしています。
NSTの分野は、専任の薬剤師2名を含む4名の薬剤師が関わっています。多職種が協力して、関与すべき患者さんをスクリーニングし、栄養療法の改善、教育を行っています。私も副NST長として入っており、静脈栄養処方の内容、嚥下や消化管機能に関わる薬の使用に関するチェックなどだけでなく、院内の栄養療法に関する教育・啓発活動なども含め、患者さんのQOLと薬の安全性を高めるために、活動しています。薬剤師が参加する8つのチーム医療のうち、救急以外は、依頼を受けて関与するという横断的なチームです。一方、救急は、救命センターにおいて、1名の薬剤師が専任者として常駐し、日常的に多職種との連携による業務を行っています。
教育体制の充実が課題
薬剤師としての高い専門性が求められる今、次世代の薬剤師を育て、受け継いでいける体制を作っていくことがとても大切です。当院でも教育体制がしっかりと整ってきたのは、ここ数年のことです。例えば、当薬剤部には、さまざまな認定資格を持っている専門薬剤師および認定薬剤師が多くいますが、その知識を生かせるよう、チーム医療への参加はもちろんのこと、病棟業務のサポートをしています。具体的には、月1回の薬剤部による症例カンファレンスで指導してもらうこともあれば、必要に応じて週1回の病棟薬剤師のカンファレンスに入ってもらうこともあります。
長崎大学病院薬剤部 病棟薬剤師配置と専門チーム
若手の教育という意味では、2年目の薬剤師に対して、各専門分野の講義および実習を行っており、現場の様子を知ることによって、自分の進むべき専門分野を決める指針になればと思っています。また、臨床における能力を十分に発揮できるよう地固めする一方で、臨床研究でも活躍できる薬剤師を育てていきたいですね。一方、私たち薬剤師の役割をチームや病院内だけでなく、さらには地域の方々に対して、理解してもらえるような努力をしていく必要があると思っています。