チーム医療における病院薬剤師の役割
NIPRO

Vol. 04 岡山大学薬学部 救急薬学分野

背景 2012年3月、岡山大学薬学部に日本で初めて救急薬学分野が開設された。きっかけは、岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 教授 名倉弘哲先生が、前年に起きた東日本大震災時に災害医療支援チームの一員として現地入りし、薬剤師の少なさと必要性を痛感する一方で、緊急時における対応を学ぶ必要があると思ったことにある。今回は、スペシャルインタビューとして、名倉先生に救急、災害医療における薬剤師の役割、救急薬学分野開設の経緯などを伺った。

チーム医療で活躍するためのキーポイント

私は、大学を卒業して基礎研究に携わった後、昭和大学病院で約7年強、薬剤師として勤務しました。当初からチーム医療を重視していた私は、栄養サポートチーム、褥瘡チーム等、片っ端から院内の横断チームに自ら参加しました。2002年頃のことですので、まだチーム医療自体の認知度も低く、その中に薬剤師が参加していることはあまりなかったと思います。
今やチーム医療の重要性は、皆が知るところとなりました。チームにおける薬剤師の役割も認知され、期待が高まりつつあるとともに、より高度な臨床能力も求められています。そのような中で、チームの一員として役立つためには、日頃から信頼関係を築いておくことがとても大切です。病院内では、顔を合わせる機会も少なくないので、そう難しくは無いでしょう。しかし、災害時は、全国から動員された医療従事者とチームを組んだり、現地で他のチームと連携しなければなりませんので、積極的に学会、研修会、勉強会など様々な場に出かけて行き、多くの医療従事者と顔の見える関係を作っておくことが大切だと思います。被災地では、共通の知り合いがいることが分かって距離感が縮まったこともありました。また共通言語を持っていることも大切なポイントになります。

生涯研鑽、得意分野を持ったゼネラリストへの挑戦を

岡山大学薬学部 救急薬学分野 教授 名倉 弘哲 先生

私の日常は、薬学部の学生、大学院生に対する授業としての講義、実地研修、セミナー等での指導が中心です。今日は、学生を連れて岡山大学病院 総合内科の漢方外来の診察室に入りました。漢方の専門医とは教育や研究を共同でさせいただくことになっていますが、漢方だけでなく総合内科は、救急分野と同様、何でも診なければなりませんので、非常に有意義な教育の場になっています。また、高度救命救急センターのチームには、病院薬剤部の薬剤師が入っていますが、大学院生の実地研修の場にもなっていますし、一方で救急チームの病院薬剤師も私たちと一緒に災害医療活動を行うようになりました。
私は、一般社団法人日本在宅薬学会の理事も務めており、救急医療と在宅医療とは、常に背中合わせであると考えています。1人の患者さんにとって、時には救急、時には在宅と、どちらも必要になることが多々あります。いずれもチーム医療が欠かせませんが、そこに求められるのは、オールマイティな薬剤師なのです。
学生へのメッセージとしては、生涯研鑽を念頭に「これだけは人に負けない」という得意分野を養成しながら、ゼネラリストたる薬剤師を目指して欲しいと思っています。そして、さらに若い、次世代を担う人たちに「薬剤師という専門職につきたい」と思わせるようなお手本になっていただきたいですね。

Data

岡山大学薬学部 救急薬学分野:
2012年3月開設。薬学の専門知識を最大限に提供し、救急医療に特化した薬物治療のアプローチ、医薬品情報の共有化、そして学部・大学院教育と臨床研究を展開する。名倉弘哲先生の指導の下、2017年5月現在、8名の学生(大学院生を含む)が学んでいる。