薬剤部長 伊藤 一弘先生に訊く チーム医療推進活動とメッセージ
薬剤部の業務体制とチーム医療の実際
薬剤部の人員は、定員14名のところ、欠員1名、現在13名で業務を行っています。このうちの一人が治験推進センターに携わっており、通常の調剤や病棟業務には関わっていません。病棟薬剤業務加算は、制度がスタートした2012年度の8月から算定を開始しました。もの忘れセンターを含む2病棟には、各1名の薬剤師を常駐させ、他病棟はスタッフに柔軟に動いてもらうようスケジュールを組んで、調剤を含む薬剤部内の業務と病棟業務を兼務してもらっています。もちろん、人員が増えれば、全病棟に常駐させたいですし、もの忘れ外来にしても週2日よりももっと多くの時間を割きたいところです。しかし、薬剤部として限りある人員の中で業務のバランスを考えることが大切で、スタッフの負担を考えつつ、継続できる体制づくりに苦心しています。
チーム医療へは、より薬剤師の専門性が活かせると考えられるところ、例えばNST、ICT、医療安全等に参画しています。私は、チーム医療の要になる多職種連携というのは、非常に難しいと思っています。それぞれが専門性を持っており、垣根も高く、互いに何をしているのか、何ができるのか、本当のところをしっかりと把握できていないのではないかと考えるからです。そこで、薬剤部が中心になって、院内で稼働するチーム医療の情報を集め、共有化する、という取り組みをスタートさせました。つい最近、病院側の承認を受け、院内全体にアナウンスしたところです。
多職種連携強化のために
チーム医療の実態について、情報収集するという取り組みは、薬剤部教育・研究主任木ノ下智康が中心となり始まりました。きっかけは、薬剤部では、従来、在宅医療に目を向け、薬薬連携に力を入れて、保険薬局とのつながりを構築してきましたが、薬薬連携だけでは先に進む事が困難であり、他職種とのつながりが必要だと考えたときに、ほとんど相手を知らないことに気づき、同じことが院内でも感じられたからです。
まずは相手を知って、全体の中での薬剤師の位置づけを考えようと、ワーキンググループを立ち上げました。実のところ、私たちも院内のチーム医療を全て把握できてはいません。そこで薬剤師の必要性を測るためにも全貌を知ることはとても大切な要因であると考え、一定の様式に沿って情報を提出してもらい、ある程度情報が集まったところで、電子カルテ上に掲載していこうと進めています。
各チームについて、どんな考えで、どんな活動をしているか。責任者は誰で、窓口はどこか。その機能を誰もが把握でき、利用しやすい形にして「見える化」をしていこうという取り組みです。これによってチーム医療の活用が活発になれば、臨床現場で困ったこと、疑問が生じた時に、答えを見つけ易くなるでしょう。その結果、患者さんにメリットをもたらし、病院にも貢献できると思います。まずは、皆さんに周知してもらうことから始め、1人ひとりの患者さんに必要なチーム医療を迅速に導入できるようになれば、と考えています。
これからの薬剤師へのメッセージ
ここ数年で、薬剤師の業務は広がり、一部、保険点数が付くようになってきました。そうしたことを背景に、病院経営にも貢献できる職種であることが知られるようになってきましたが、まだまだ薬剤師の存在価値をアピールする必要があると思っています。個人的な満足にとどまらず、周囲の人たちに私たちの業務を理解していただき、薬剤師全体の存在価値を高めていく努力をすることがとても大切です。一方、限りある人員の中で、業務のバランスを上手くとっていくとともに働きやすい環境を作っていくことが必要だと考えています。
若い薬剤師の方々に対しては、人に言われたことを受け入れるだけでなく、周囲を見て、自分で考えて行動してほしいと思います。自己中心になりがちな現代ですが、医療人としては、まず周囲の人たちの言動を見て、そのニーズや思いをくみとり、行動できる人になって欲しいのです。そうすることで、薬剤師の業務はもっと発展し、多くの経験を積むことができ、存在価値を高めていけると思っています。