医療とネットワーク
NIPRO

Vol.3

震災経験で深まった絆と
ICTネットワークが進める医療連携
一般社団法人 福島県薬剤師会副会長 
島貫英二先生
2011年に起きた東日本大震災で、大きな被害を受けた福島県。医療においては、震災経験が多職種の絆を深め、ヒューマンネットワークの醸成につながっています。そのような中で東日本大震災からの復興事業の一環として「キビタン健康ネット」プロジェクトがスタート。ICTを活用した全県ネットワークとして構築され、運用が始まっています。その開発段階から大きな推進力を発揮している福島県薬剤師会の副会長 島貫英二先生にお話を伺いました。
中野一司先生
ネットワーク推進の中で
真のかかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師の具現化へ
福島県では、東日本大震災を機に薬局薬剤師に対する評価が変わった。ある在宅医は、これまで連携薬局を絞っていたが、災害時の患者の安否確認やサポートを考慮に入れ、一気に数を増やしたという。また薬局薬剤師が診療情報を知ることが出来れば、治療レベルが上がると明言する医師もいる。そのような中で期待される新しい薬局の機能、薬剤師像とはどのようなものだろうか。
地域におけるこれからの薬局の在りようについて、お考えをお聞かせください。
島貫英二先生

島貫 英二 先生

今、薬局の機能は大きく変わりつつあります。平成27年に厚生労働省が「患者のための薬局ビジョン」を策定して以来「かかりつけ薬剤師・薬局」が推奨され、変革の波を感じています。そこには、6年制教育を受けた薬剤師が輩出されてきた背景があり、今年開催した福島県薬剤師学術大会でも新しい息吹を感じる演題が多くなってきました。診療情報をフル活用できる薬剤師が増えてくるでしょう。今はちょうど病院で病棟薬剤業務が始まったときのように、戸惑いながらも挑戦する時期ではないでしょうか。だから「かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料」にぜひチャレンジして欲しいですね。そのためにも診療情報が得られるシステムとその活用は不可欠だと考えます。ただそれだけでは不十分で、がん化学療法での事例のように、密なコミュニケーションを伴う薬薬連携によって、患者さんの生活環境の把握とその中で行われる薬物治療の問題点へのサポートが必要です。薬薬連携への取り組みは、県内各医療圏でも始まっていますので「キビタン健康ネット」をマッチングさせながら、さらなる連携の推進と「かかりつけ薬剤師・薬局」の具現化を目指したいと思います。
島貫英二先生

島貫 英二 先生