医療ネットワーク先進県として有名な長崎では、
システムをフル活用する保険薬局の薬剤師が増えています。
その軌跡と実際について、長崎薬剤師在宅医療研究会(通称P-ネット)のコアメンバーである宮﨑長一郎先生、佐田悦子先生、南野潔先生、中村美喜子先生に取材しました。
Vol.2
薬局薬剤師の視点からみた
長崎における医療ネットワーク
長崎における医療ネットワーク
宮﨑 長一郎 先生
(宮﨑薬局 代表取締役/P-ネット代表世話人)
佐田 悦子 先生
(アクア薬局矢上店 薬剤師/P-ネット副代表世話人)
中村 美喜子 先生
(長崎県薬剤師会 副会長/ペンギン薬局/P-ネット事務局)
南野 潔 先生
(株式会社カインドヘルスサポート 代表取締役/西時津調剤薬局/P-ネット副代表世話人)
(宮﨑薬局 代表取締役/P-ネット代表世話人)
佐田 悦子 先生
(アクア薬局矢上店 薬剤師/P-ネット副代表世話人)
中村 美喜子 先生
(長崎県薬剤師会 副会長/ペンギン薬局/P-ネット事務局)
南野 潔 先生
(株式会社カインドヘルスサポート 代表取締役/西時津調剤薬局/P-ネット副代表世話人)
医療ネットワーク発展の軌跡の中で
~P-ネット発足と在宅医療への参画~
長崎県には、あじさいネット(2004年発足)をはじめ、長崎在宅Dr.ネット(2003年発足)、長崎薬剤師在宅医療研究会:通称P-ネット(2007年発足)など全国的に知られたネットワークシステムが構築されている。この中でP-ネットは、長崎市内にある保険薬局の有志の薬剤師が、在宅医療において薬剤師が十分な活動を行うために立ち上げたものだ。あじさいネットができてからは、P-ネットでもその活用を推進するようになり、連携の輪が広がっている。
長崎在宅DrネットやP-ネットの発足の前後は、在宅医療の黎明期にあたるかと存じますが、当時の状況とその後の経過についてお聞かせください。
宮﨑:介護保険がスタートしたのが2000年、間もなくして2003年に在宅医療に携わる医師たちによって、診診連携を目的とした長崎在宅Drネットが結成されました。その時点では、まだ薬剤師は傍観者にすぎませんでした。その後、在宅医療が浸透し始め、看取りも増えてきたとき、医療用麻薬の処方が受けられないケースが散見され、在宅医から「薬剤師が手伝ってくれない」という言われ無き非難をされていることに危機感を感じ、2007年にP-ネットを発足しました。ですからP-ネットの会員は原則、麻薬の発注が可能な薬剤師で、小規模薬局の経営者が多くを占めています。また24時間稼働できるのも特徴だと思います。
南野:P-ネットは、発足当初から「依頼があったら断らない」ことをモットーとし、長崎在宅Dr.ネットの受け皿として機能させていくことを目標の一つに掲げました。そして、長崎在宅Dr.ネットの中核システムである主治医・副主治医制にならい、担当薬局とサポーター薬局を定める仕組みをつくり、また会員同士が互いに情報共有をし、協力し合う体制を整えていきました。今、P-ネットには、長崎市とその周辺の保険薬局の薬剤師51名が参加しています。また在宅医療の現場に関わる連携活動以外にも、年に10回程度の症例検討会を中心とした研修会を行っています。
中村:在宅訪問薬剤管理指導を始めた頃は、患者さんの現状から次に起こりうる出来事を予測し難く、薬剤の準備に慌てたり、夜間業務を増やす結果を招いていました。しかし、徐々に病状の経過が予測できるようになり、また多職種からのサポート体制も整い、業務の効率化や質の向上につながっていきました。薬剤師が在宅に参画したばかりの頃、医師に「薬剤師に何ができるのか」と思われていたようですが、今は「在宅医療の質が上がった」という評価を戴くことも増えてきました。
薬剤師が在宅医療に貢献できるようになったのは、P-ネットの存在はもちろんのこと、医師や多職種とのつながりも大きな要因です。例えば長崎大学病院では、熱意ある先生方がフィジカルアセスメント講習を開催するなど、私たちに学びの場を提供して下さいます。また大学病院の連携室が主催する忘年会には、200人もの地域の医療者が集まりますし、長崎在宅Dr.ネットの先生方とも多職種参加のオフ会で親交があります。こうした機会で絆を深めることは、とても大切だと思っています。