Vol.3
震災経験で深まった絆と
ICTネットワークが進める医療連携
ICTネットワークが進める医療連携
一般社団法人 福島県薬剤師会副会長
島貫英二先生
島貫英二先生
薬薬連携推進におけるICTの役割
「キビタン健康ネット」における調剤情報を共有するシステムは、災害対策の一環でもあり、情報をアップロードする薬局の役割は大きい。一方で診療情報の共有は、基幹病院が提供し、診療所や薬局等の地域医療を担う医療者が閲覧する仕組みである。病診連携においては、すでに多くの診療所が患者の同意を得た上で、画像の参照等に活用している。薬局においても、服薬指導における活用はもちろんのこと、薬薬連携のツールとして有用性を見出しており、期待が高まっている。
薬局における「キビタン健康ネット」の活用事例をお教えください。
平成30年度の福島県委託事業として、私たちはがん化学療法と糖尿病に的を絞り「キビタン健康ネット」活用の実証事業を行いました。がん化学療法では、薬局薬剤師は病院薬剤師から患者個々の診療情報について解説を受けた上で、「キビタン健康ネット」を利用しながら服薬指導を実施しました。実証事業は約2ヵ月間でしたので、報告数は7症例でしたが情報共有は活発に行われ、「キビタン健康ネット」にある検査値やレジメン内容を把握することの簡便性・有効性が報告されました。連携手段としては「キビタン健康ネット」以外にもお薬手帳、処方箋、電話、面談、トレーシングレポートが用いられ、18項目の共有情報(図②)のうち、約半数くらいが「キビタン健康ネット」を活用していました。この事例から、客観的データを閲覧できるICTネットワークは、有力なツールの一つになり得るとともに、病院での患者さんの様子や取り巻く環境なども含め、複合的な情報を共有するには、他の手段も必要であることが明らかになりました。
一方糖尿病では、過去に遡って検査値が閲覧できる「キビタン健康ネット」の特徴を生かし、これまで薬剤師が患者さんから服薬指導時に聞き取っていた検査値と実際の検査値を比較し、聞き取り値の正確度、また正確な検査値を伝えている患者群とそうでない患者群における治療効果の差を検証してみました。結果、2型糖尿病患者18名のうち、正確な検査値を伝えていた患者さんは56%、正確な値を伝えていない患者さんは44%でした。HbA1cの値では、正確な値を伝えている群の方が低い傾向がみられ、正確な値を伝えていない患者さんは、自己状態の把握や病気に対する意識が不十分だと推察されます。薬剤師もそのことを念頭におき、正しい数値を把握した上で服薬指導を行うことが、治療効果の向上につながると考えています。
図②:情報共有のために用いた手段(複数回答あり)
一方糖尿病では、過去に遡って検査値が閲覧できる「キビタン健康ネット」の特徴を生かし、これまで薬剤師が患者さんから服薬指導時に聞き取っていた検査値と実際の検査値を比較し、聞き取り値の正確度、また正確な検査値を伝えている患者群とそうでない患者群における治療効果の差を検証してみました。結果、2型糖尿病患者18名のうち、正確な検査値を伝えていた患者さんは56%、正確な値を伝えていない患者さんは44%でした。HbA1cの値では、正確な値を伝えている群の方が低い傾向がみられ、正確な値を伝えていない患者さんは、自己状態の把握や病気に対する意識が不十分だと推察されます。薬剤師もそのことを念頭におき、正しい数値を把握した上で服薬指導を行うことが、治療効果の向上につながると考えています。
「キビタン健康ネット」を使っておられる薬局の評価はいかがですか。
薬局では、検査値や副作用歴などを閲覧することで「電話による疑義照会が少なくなった」、また逆に「禁忌薬を見つけて疑義照会につながった」など、業務の効率化と質の向上につながっています。患者さんからも「キビタン健康ネット」を活用した併用薬のチェックなどに安心感をもたれるケースも報告されています。また実際に、薬薬連携の推進に役立っているという声も聞かれるようになってきました。薬局薬剤師は、情報量が増えたことで知識の習得に貪欲になり、疑義照会も踏み込んだ内容になっていきます。薬局側からの積極的なアプローチが、病院薬剤師との距離を縮め、薬薬連携を推し進める結果につながっているようです。