Vol.2
薬局薬剤師の視点からみた
長崎における医療ネットワーク
長崎における医療ネットワーク
宮﨑 長一郎 先生
(宮﨑薬局 代表取締役/P-ネット代表世話人)
佐田 悦子 先生
(アクア薬局矢上店 薬剤師/P-ネット副代表世話人)
中村 美喜子 先生
(長崎県薬剤師会 副会長/ペンギン薬局/P-ネット事務局)
南野 潔 先生
(株式会社カインドヘルスサポート 代表取締役/西時津調剤薬局/P-ネット副代表世話人)
(宮﨑薬局 代表取締役/P-ネット代表世話人)
佐田 悦子 先生
(アクア薬局矢上店 薬剤師/P-ネット副代表世話人)
中村 美喜子 先生
(長崎県薬剤師会 副会長/ペンギン薬局/P-ネット事務局)
南野 潔 先生
(株式会社カインドヘルスサポート 代表取締役/西時津調剤薬局/P-ネット副代表世話人)
薬剤師にとってのあじさいネットとは
~入会者の拡大と活用法の模索~
あじさいネットは、大村市医師会、国立長崎医療センター、大村市民病院の3施設の代表者協議に端を発し、2004年から運用が始まった。当初は、大村市内にある中核病院を情報の開示施設、診療所を閲覧施設と想定し、病診連携を目的とした一方向の情報共有システムであったが、開示施設を限定しなかったことが後の発展につながっていく。まもなくして、薬剤師からの要望により病薬連携を開始。2009年に長崎市へと広域化したのを機に病院、診療所、薬局ともに登録数が増え、病薬連携も本格化した。2014年からは在宅医療であじさいネットを利用できるようになり、訪問看護ステーションや介護事業所の参加も可能になった。あじさいネットの公式ホームページによると2019年6月30日時点での情報提供病院は37、情報閲覧施設は354、うち薬局は113となっている。尚、電子化されている全ての診療情報の共有を目指しているが、情報開示の範囲は、開示施設ごとの設定である。
宮﨑先生は早くからあじさいネットを活用されていますが、活用の実際についてお教えください。
宮﨑:私はあじさいネットの仕組みを知ったとき、画期的なシステムだと直感してすぐ入会し、2011年から使い始めました。活用するには、まず患者さんの同意が必要です。私の場合、リスクの高い患者さんや在宅医療に移行する患者さんが対象ですが、中には「覗かれる」という感覚を持たれる方もおられます。私は単に「カルテを閲覧させてください」と依頼せずに、「あなたの薬物治療の安全性を高めたい」という本来の意義を説明することから始めました。するとスムーズに同意が得られ、短期間に本店、支店を合わせて40名ほどの患者さんの診療情報が閲覧可能になりました。
次に‘診療情報をどのように活用するか’がテーマでした。当時、ほとんどの保険薬局の薬剤師にとって未知の世界でしたし、私があじさいネットの会合で活用事例を発表すると医師たちは「そんな活用ができるのか」という反応を示していました。しかし、使ってみるとすぐに、医療安全面での有用性がわかります。簡単な事例ではFAXされた処方箋とあじさいネットから得た情報を比べ、単純な書き間違えを見つけることがあります。また検査値等からは処方監査ができ、情報量が多いとさらに精度が高まります。一方で、薬剤師の教育ツールにもなり得ます。基幹病院の最新の医療に触れることができ、分からないことがあれば自ら調べる努力をしますので、学習の機会も知識も増えるのです。
他の先生方にもあじさいネットへの入会を勧めてこられたそうですが、どのような経緯だったのでしょうか。
宮﨑:あじさいネットは、長崎在宅Drネットの協力もあって、2014年から在宅医療での利用が可能になりました。さらにモバイル端末iPadからも接続できるようなったのを機に、P-ネットのメンバーに入会を勧めました。ただ、入会には、初期費用の他に利用料として年間5-6万円が必要になりますので、最初は、経済的な負担や多忙を理由に躊躇する人たちも少なくありませんでした。しかし、私が長崎県薬剤師会会長を務めていた2016年に団体契約をしたことにより、薬剤師会会員は、初期費用が不要となりました。これを機に加入者が急増していきました。
あじさいネットで開示される情報量も増えており、病院内の医療者と同様の診療情報が得られるケースも少なくなく、様々な活用法が考えられます。一方で活用する側の責任は重くなり、より厳しく能力を問われ、評価されることを心しておく必要があると思います。
あじさいネットで開示される情報量も増えており、病院内の医療者と同様の診療情報が得られるケースも少なくなく、様々な活用法が考えられます。一方で活用する側の責任は重くなり、より厳しく能力を問われ、評価されることを心しておく必要があると思います。
図:「薬局での活用状況」 (平成28年度 患者のための薬局ビジョン推進事業 あじさいネットを活用した「かかりつけ薬剤師・薬局」機能強化推進事業の一環として実施された 「あじさいネットを利用した薬局へのアンケート調査」より)