長年、365日24時間体制の在宅医療を提供し、
多職種連携、地域医療連携システムの構築に尽力されてきた
医療法人ナカノ会理事長 中野一司先生にお聞きしました。
Vol.1
多職種連携から地域包括ケアシステムへ。
ICTをフル活用した在宅医療からの挑戦
ICTをフル活用した在宅医療からの挑戦
医療法人ナカノ会理事長
中野一司先生
中野一司先生
ICT活用のポイント
業務に教育に、フル活用するために
中野先生は当初からICTをフル活用してきた。核となるツールは、電子カルテとメーリングリスト(ML)である。日々の業務では、医師がパソコンを携帯し、患者宅で診療所見を電子メモとして書き込む。この電子メモは訪問診療専用で訪問診療コース別、患者別に分類され、事務職で前日に準備している。診療終了後は、電子メモの内容を法人内MLに送信して情報共有化を図り、また事務職が電子メモの内容を電子カルテにコピー&ペーストし(電子カルテは閲覧用として使用)、医師の事務作業の負荷軽減を図っている。そのためには多くの事務職が必要だが、事務の人件費は医師より安く、経営的にも理にかなった選択である。一方、2006年に中野先生は在宅ケアネット鹿児島ML(CNK – ML)を立ち上げた。参加者は2018年6月の時点で約1800人、医療・介護に留まらず、政治、経済、哲学、歴史、文化などあらゆる分野での議論が繰り広げられている。
ICT活用のポイント、そして未来についてどのように考えておられますか。
ICTは上手く使えば効率的かつ強力なコミュニケーションツールになり得ますが、常にセキュリティーの問題が取り沙汰されます。例えばセキュリティーの観点から電子メールなどでは患者情報を扱うべきではないという意見もあります。しかし、個人的には、セキュリティーよりもリテラシーの問題だと思います。質の高いケアを提供するためには、医療的な情報以外にも患者さんの生活状況等の情報をスタッフで共有することになります。その場合、スタッフは各人の価値観を持ち込まず(他者に強要せず)、他者のプライバシーをしっかり守ること、患者さんには情報共有する意味をきちんと説明し、ご理解いただくことが重要ではないでしょうか。一方、ICTは教育ツールでもあり、CNK – MLは学びの場といえます。ここでもキーワードは寛容です。主観と主観の交換が行われますので、寛容でなければ炎上します。CNK – MLのルールはただ一つ、個人の意見を誹謗中傷しないことです。また人間関係の構築には、顔を合わせて話をすることに勝るものはありませんから、オフ会も行っており、CNK – MLは出会いのツールという側面も持っています。
ICTの未来を考える時、利便性と相反するセキュリティーがポイントになりますが、最近は、MCS(Medical Care Station)のように無料のセキュリティーを確保した利便性の高いツールも登場しています。今後は、AIやブロックチェーンの進化で、セキュリティーを確保しながらの利便性の追求がなされていくと考えています。