「フローラ薬局」茨城県水戸市/篠原久仁子氏
フローラ薬局では、薬事法で全成分表示が義務付けられている化粧品のパッチテストを受けることができます。
毎月のように皮膚科医からの紹介で、かゆみや荒れなどの皮膚障害に悩む患者さんが来局され、テスト結果を踏まえ、場合によっては国内外からその方に合った製品を取寄せて提供しています。
取組みのきっかけは、肌トラブルに悩む女性からの相談でした。「原因がわからないまま毎日マスクをつけないと外出できないほどで、薬剤師として何かできないかと思いました(篠原さん)」。
他にも何年も引きこもり状態で自身の子どもの行事に行けないなど、皮膚障害は生活の大きな苦しみになりえます。
相談対応の中で、一番多いトラブルの原因はシャンプーだと篠原さんは感じたことから、薬剤師の本質的な任務について考えています。
「シャンプーは誰もが日常的に使う衛生用品です。その衛生用品の取扱いは、薬剤師法第1条に定められる『薬剤師の本質的な任務』に当てはまります。皮膚障害の原因がシャンプーだと考える方は多くありません。それに気づき、アドバイスできるのは薬剤師です」と話し、毎日使うものが原因となる皮膚障害のセルフメディケーションにおける薬事衛生は、薬剤師が司らなければと、提言します。
24年間続けてきた漢方薬膳講座は、現在、自治体からの要望による市民講座などへと広がり、篠原さんは身近な食べ物や健康への関心の高さを実感しています。
「小さな薬局ですし、品揃えではなく薬剤師としての技術と専門性をもって、その人に合ったアドバイスができる“相談対応力”が強みだと思っています」という篠原さんのもとには日々多くの方が訪れます。
二人の子どもがいる篠原さん。今後は、「当たり前のように困ったことを相談できる薬剤師」を地域でさらに増やすことを目標に、まずはこれからフローラ薬局を背負っていく薬剤師の次男に“相談対応力”を引き継いでいきたいと考えています。
篠原さんが薬局名に込めた「学んできた“種”をこの地にまき、地域に健康の花(フローラ=花の芽)を咲かせたい」という願い。花は見事に咲きほこり、次の種をまく準備も進んでいます。
「子どもたちの母としてだけでなく、“地域のおかあさん”として今後も活動を続けていきたいです」と話す篠原さんの顔にも、笑顔が大きく花開いていました。
(取材実施:2020年1月)編集:学校法人 医学アカデミー