老舗の歴史に甘んじないきめ細かな地域密着経営

「平岡回生堂薬局 富田店」三重県四日市市/平岡伸五氏

老舗相談薬局の技と存在感を未来に

 薬局経営の一方、平岡氏自身は業務の合間を縫って地元校区の学校薬剤師を務め、プールの水質検査からアレルギーを持つ子どもの給食内容の相談などにも積極的に対応しています。例えばシラミが発生したとか消毒はどうすれば良いかなど、昔からの薬局は何かしら頼りにされているそうです。そんな地域に根差す老舗薬局の役割を受け継ぐ日々に加え、地元薬剤師会理事の立場で社会福祉協議会などの世話役としても奔走し、薬局・薬剤師における地域包括ケアシステムや在宅医療参画の組織的な連携の先頭にも立っています。

 こうした活動を通じて平岡氏は「徐々に薬局・薬剤師も地域医療で顔が見える関係づくりが進んできた実感があります」との手応えを掴む一方、「健康サポート薬局対応で地域医療に手を挙げる方々も一気に増えましたが、認可を得ることではなく高齢社会の地域で存在価値が認められることが目的とすれば、さらに専門薬剤師をはじめ何らかの得意分野を持つなど、今から次の段階に向けて上を目指すことを考えるべきだと感じます」と気を引き締めます。

 薬学生の実務実習受け入れにおいては、薬局業務以外でもイベントによる地域との積極的なコミュニケーションを体験させたり、学校薬剤師活動に同行させるなど、地域に密着した相談薬局を舞台に活躍する新しい薬剤師の育成にも精力を注いでいるそうです。「何かあった時に地域から頼りにされ、また適切な相談対応を図る上で薬局の薬剤師はこれから人間力が求められると思います」。

 平岡回生堂薬局においても人材確保は目下の課題。「個人薬局にとって薬剤師の採用は難しい状況が続いていますが、新卒薬剤師は増加傾向にあるので今後は我々のような薬局にも回ってくると期待しています。そうなれば余裕を持って在宅実績やイベントなどの企画も増やせますし、そろそろ自分の次の世代についても本格的に考えていきたいと思っています」と語る平岡氏の視線は、老舗の技と存在感の確かな継承を見据えています。

(取材実施:2016年7月)
編集:薬局新聞社