20年前からアロマ・ハーブを導入して身近な健康観の提案に取組む

「西尾薬局 フローラメディカ」富山県富山市/西尾公秀・茂美氏

モノや情報の提供だけではなく健康観に働きかける姿勢へのこだわり

 専門店並みのアロマ・ハーブの品揃えや知識はもちろん、身近な健康支援の取組みを通じて公秀氏は「健康に対する意識を変えて頂くための活動を一緒に行うことが大切」と強調します。そのため本店では売場の奥に充分な研修室を備え、アロマ・ハーブスクールや漢方教室をはじめ、季節に応じた健康の講習会、乳幼児体操会など地域住民向けのセミナーを活発に実施。研修室は「毎日何かしらの催しが開かれている」フル稼働の状態と、日常的な薬局の機能に位置付けられています。

 「アロマやハーブも単に買うだけなら薬局である必要はありません。医療もそうですが、きちんと自らの体や健康について考え、納得の上で取組んでこそ本来の成果が導けます。アロマなどで入り口は広めにしておいて、興味を持ってもらいながら地域の方々に深く関わっていくことを意識しています」。公秀氏は『新しい健康観の提供』という経営理念の実践をそのように説明するとともに、かかりつけ薬剤師や健康サポート薬局への流れを踏まえ、「これからの薬局に求められる基本的な姿勢にもなると感じています」との感触を語ります。実際、充実したアロマ・ハーブには薬局経営者からの関心や引き合いが多く、各地の薬局にオリジナル商品を供給したり、茂美さんが講師に招かれるといった広がりを見せているそうです。

 「正直こうした薬局の経営を成り立たせるのは簡単ではなく、まだまだ私達も調剤での実績をもとに試行錯誤の最中。独自の商品を維持していく経営的な側面からも、志を同じくする方々と新しい薬局作りに関するネットワーク作りができれば」と公秀氏。また、茂美さんはアロマ・ハーブを機に、改めて薬局の薬剤師である意義を感じたとも言います。「場合によっては治療との兼ね合いや薬との飲み合わせも考慮する必要がありますので、薬剤師が取扱うことで非常に信頼してもらえます。必要な医療や薬物療法との線引きを図る上で薬局・薬剤師の関与は有意義で、職能の幅を広げる取組みとして若い薬剤師の方々にやりがいを伝えていきたいです」。

 最近は研修室で子供向けのお菓子教室を企画するなど、薬局としての食や運動への関与も検討し始めています。医薬分業がピークに差し掛かり、薬局の機能や役割といったあり方が改めて問われるなか、「むしろこれまで薬局が行ってきた業務はほんの一部分。地域包括ケアシステムや在宅医療をはじめ、もっと地域で活躍できる可能性を切り拓いていけるはず」と意気込む西尾薬局の挑戦はこれからも続きます。

(取材実施:2016年2月)
編集:薬局新聞社