“村で初の薬局”で総合的な健康ステーションの理想を実践

「ほし薬局戸沢店」山形県最上郡戸沢村/星利佳氏

医薬分業や薬局機能への理解を得るところから始まる取組み

無薬局地区に開業するということでは、医療・保健の質や利便性向上への期待が思い浮かびますが、村民にとって薬局の身近な利用とともに医薬分業自体が初体験になるとの側面から、実際には「しばらくは戸惑われることも多かった」そうです。

そこで診療所の医師に対し、治療の選択肢を広げる方向で採用薬や備蓄薬の提案を積極的に行いながら、分割・粉砕や一包化といった患者ごとのきめ細かな対応を図ることで、「薬局ならではの役割を実感してもらうようにしています」と星氏。住民同士の関係性が密な集落ということもあり、「例えば窓口で気になった人に『今度遊びに行っていい?』と気さくに声をかけ、業務に関わらず足を運ぶようになっていますね」という薬局と村民の距離を縮めるフットワークも含め、医薬分業や薬局・薬剤師の機能に対する理解を得る取組みを通じて着実に村での信頼を育んでいます。

もちろん診療所だけではなく、ケアマネや在宅ケア推進委員などの経験、さらに栄養士の存在を活かして隣接する村役場や訪問看護ステーション、介護・福祉関連部署との連携にも積極的です。そもそも古くから営みを培う山村だけに、高齢化は身近で深刻な問題。星氏は総合的な健康ステーションを目指して開業を決めた段階から、特に在宅医療・介護方面での幅広い対応を重視していました。

「診療所の医師は初めの頃こそ、患者の負担増を理由に薬剤師の訪問には消極的だったものの、配達などに出向いた際に服薬や生活の状況を細かく伝えるようにしていたところ、『そんなことまでやってもらえるのか』と薬剤師の訪問の意義を認識して頂きました。その後、薬局の提案で訪問指示を出してもらうようになり、訪問看護師などと連携しながらバイタルチェックも任されています」と、自然な形で段階的に訪問件数を積み重ねていく状況に、今後間違いなく要望が増す高齢者の幅広いケア対応への心構えを強めています。