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残薬問題の原因と令和8年度調剤報酬改定のポイント

薬剤師トレンドBOX#55

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令和7年の厚生労働省の調査で、約半数の患者さんが自宅にあると回答した「残薬」。服用されない薬が自宅に残ったままになると、期待される治療効果が得られないだけでなく、医療費の増加にもつながります。
令和8年度の調剤報酬改定では、残薬調整に関する評価体系が見直され、新たに「調剤時残薬調整加算」「薬学的有害事象等防止加算」などが新設されました。残薬問題に対する薬剤師の積極的な関与がより求められる今、正しく知っておきたい残薬の知識を、令和8年度調剤報酬改定のポイントとあわせてご紹介します。

残薬の発生原因とリスク

残薬とは一般的に、処方・調剤されたにもかかわらず、患者さんが服用せずに自宅などで保管している薬のことを指します。「飲み忘れが積み重なった」「自分で判断し飲むのをやめた」「新たに別の医薬品が処方された」「飲む量や回数を間違っていた」「別の医療機関で同じ医薬品が処方された」など、原因は患者さんによってさまざまです。「薬が少し余っているだけ」と思われる場合でも、その背景には服薬アドヒアランスの低下や、治療内容への理解不足が隠れていることがあります。
また、過去の厚生労働省の調査では約3割の人が、残薬を「保管しておき飲むこともある」と回答しています。
患者さんが自己判断で増量して服用したり、使用期限が過ぎた薬や開封したまま保管されたことで品質が低下した薬を誤って服用したりする可能性もあります。

薬剤師として、患者さんの生活状況や服薬上の困りごとを丁寧に確認し、残薬が生じた背景を把握したうえで、薬の適正使用を支援していくことが重要です。残薬の確認は、患者さんの治療継続や安全な薬物療法を支える大切な機会ともいえるでしょう。

残薬問題が注目される背景

残薬は以前から薬局や在宅医療の現場で問題視されてきました。近年、改めて注目度が高まっている理由として、大きく2つの背景があります。

そのひとつが、高齢化の進展です。残薬は高齢者に多くみられる傾向があります。高齢の患者さんでは、複数の疾患を抱え、複数の薬を長期にわたって服用しているケースが少なくありません。薬の種類や服用回数が増えるほど管理は複雑になり、特に服薬管理能力が低下している患者さんでは、飲み忘れや飲み間違いが起こりやすくなります。
前述の令和7年の厚生労働省の調査でも、「残薬がある」と回答した患者さんのうち、約6割が60歳以上であったことが示されています。今後も高齢化が見込まれる日本において、残薬問題への対応は薬剤師にとってますます重要になるでしょう。

もうひとつの背景には、医療費や医薬品資源の問題があります。日本の医療費は年々増加を続け、年間50兆円に迫っています。高齢化の進展に伴い、今後も医療費の増加が見込まれるなか、服用されないまま残っている薬に医療費が投じられている現状は、医療保険財政にとって見過ごせない問題です。また、適切に使用されないまま家庭内に保管される薬を減らすことは、限られた医薬品資源を有効に活用するという観点からも重要です。残薬調整は、患者さん個人の服薬管理だけでなく、医療費の適正化や医薬品資源の有効活用にもつながります。

このように、残薬問題への対策は患者さんの安全な薬物療法を支えるだけでなく、社会全体の医療資源を守るうえでも大きな意義があります。薬剤師には、患者さん一人ひとりの服薬状況を丁寧に把握し、適切な処方提案や服薬支援につなげていく役割が期待されています。

令和8年度調剤報酬改定で変わる残薬調整

令和8年度の調剤報酬改定では、残薬調整に関する評価体系が見直されました。
これまで残薬調整は薬学的有害事象等の防止とあわせて、「重複投薬・相互作用等防止加算」の枠組みの中で扱われていました。改定後は残薬調整と薬学的有害事象等の防止が分けて評価される形になります。

残薬調整にかかわる主な加算

項目 算定要件 点数
調剤時残薬調整加算(新設) 残薬が確認された患者において、残薬の調整のために処方医の指示の下に、7日分以上相当の調剤日数の変更が行われた場合(6日分以下でも理由記載により算定可) 50点または30点
薬学的有害事象等防止加算(新設) 薬剤服用歴、電磁的記録をもって作成された処方箋の仕組みを用いた重複投薬の確認等に基づき、処方医に対する照会(残薬調整に係るものを除く。)の結果、処方に変更が行われた場合 50点または30点
かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(新設) 調剤時残薬調整加算若しくは薬学的有害事象等防止加算を算定したものに対して、患者又はその家族等の求めに応じて、前回の調剤後、当該患者が再度処方箋を持参するまでの間に、かかりつけ薬剤師が電話等により、服薬状況や残薬状況等の継続的な確認及び必要な指導等を実施していた場合 50点
(3月に1回)
かかりつけ薬剤師訪問加算(新設) 患者又はその家族等の求めに応じて、患家に訪問して、服用薬の服薬管理、残薬状況の確認等を行い、その結果を保険医療機関に情報提供した場合 230点
(6月に1回)

参考:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】を参考に作成

「調剤時残薬調整加算」では、在宅患者さんであるかどうか、またかかりつけ薬剤師による対応であるかどうかなど、介入内容に応じて評価が設定されています。特にかかりつけ薬剤師が残薬調整を行った場合には50点が算定でき、継続的に患者さんの服薬状況を把握することが期待されているといえるでしょう。

従来よりも残薬調整への評価が明確になったことで、薬剤師には「患者さんから言われたときだけ対応する」のではなく、薬歴やお薬手帳、来局間隔などをもとに、能動的に残薬を把握する姿勢が求められています。

残薬調整は薬剤師の専門性を示す業務へ

患者さんの手元に薬が残ってしまう背景には、飲み忘れだけでなく、生活リズムの変化や副作用への不安、治療内容への理解不足など、さまざまな要因があります。残薬は、患者さんの服薬状況や生活背景を知るための大切なサインといえるでしょう。
令和8年度調剤報酬改定では、残薬調整が独立した加算として新たに評価され、薬剤師による介入の重要性がより明確になりました。残薬を確認し、必要に応じて処方医へ情報提供や処方提案を行うことは、医療費の適正化にとどまらず、治療効果の向上や副作用の防止にも寄与します。

今後は、患者さんやご家族からの申告を待つだけではなく、薬歴やお薬手帳、来局間隔、在宅訪問時の様子など、日々の業務で得られる情報をもとに、薬剤師側から主体的に残薬へアプローチする姿勢が欠かせません。
継続的な残薬対応は、かかりつけ薬剤師としての信頼構築にもつながります。患者さんの生活に寄り添いながら薬物治療を支えることが、これからの薬局・薬剤師の価値を高める重要な取り組みとなるでしょう。

(2026年6月掲載)
編集:株式会社 医学アカデミー

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