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薬剤師が知っておきたいマイナ保険証
薬剤師トレンドBOX#46
近年、電子カルテや電子処方箋など、患者の医療情報に関わるさまざまな情報伝達ツールが電子化され大きな注目を集めています。そんな中、健康保険証についても現行の保険証の発行が廃止され、マイナンバーカードを健康保険証として利用する、いわゆるマイナ保険証に移行する動きが進んでいます。そこで、薬剤師が知っておきたいマイナ保険証の概要についてご紹介します。
マイナ保険証への移行
令和6年12月2日以降、現行の健康保険証の新規発行は終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行します。令和7年12月1日までを移行期間とし、完全にマイナ保険証への移行を完了させる見通しがたてられています。なお、令和6年12月2日時点で有効な現行の健康保険証は移行期間中も引き続き使用可能です。
マイナ保険証の現状
マイナ保険証の現在の利用率は医療機関への受診回数の多い前期高齢者が最も高く、若年層の利用率の低さが課題となっています。また、いまだ多くの医療機関でマイナ保険証の利用率が伸び悩んでおり、薬局においては利用率3%未満の施設が70%を超え、他の医療機関と比べても薬局での利用率が低いことがうかがえます (令和6年1月時点)。さらに、若年層ではマイナンバーカードの保有率も低いため、マイナ保険証の周知強化が必要となるでしょう。
マイナ保険証導入によるメリット
マイナ保険証の利用により、患者も医療者も、大きなメリットがあります。
患者のメリット
① データに基づくより良い医療が受けられる
医療機関でマイナンバーカードを用いて受付をし、患者が情報提供に同意すると、過去に処方された薬や特定検診などの検査結果を医師や薬剤師がスムーズに確認することができます。また、患者自身が初めて受診する医療機関でも情報提供の同意を得ることで医師、薬剤師が患者データを確認することができ、より良い医療が受けられます。
② 手続きなしで高額療養費の限度額を超える支払いが免除される
通常、高額療養費制度では、窓口負担を抑えるために事前に限度額適用認定証を申請し、医療機関へ提出する必要があります。しかし、申請が間に合わなかった場合、患者は一時的に高額な医療費を全額負担しなければなりませんでした。マイナンバーカードを利用すると、患者が申請に必要な情報提供に同意すれば、限度額適用認定証がなくても、公的医療保険が適用される診療に対しての支払いが限度額を超えないように自動で調整されるようになりました。
③ マイナポータルで確定申告時に医療費控除が簡単にできる
マイナポータルは、行政手続きや健康・医療情報を一か所で確認できる政府のオンラインサービスです。このサービスを使うと、確定申告の際に医療費控除を行うことができます。具体的には、マイナポータルは「e-Tax」というシステムと連携しています。e-Taxは、インターネット上で確定申告を行うシステムで、税務署に行かずに申告を済ませることができます。このシステムとマイナポータルを連携させることで、医療費控除の申請が非常に簡単になります。例えば、医療費の領収証を保管しておかなくても、マイナポータルが自動的に医療費通知情報を管理してくれます。そして、e-Taxを使って確定申告する際には、この情報が自動的に入力されるので、手作業でデータを入力する手間が省けます。これにより、申告がスムーズに進み、時間や労力が大幅に減るというメリットがあります。
マイナ保険証導入により、薬剤師の負担も軽減
これまでは治療を行う上で必要な情報を患者への問診によって確認する必要がありました。また、加入している保険資格の情報確認では健康保険証の情報を目視で確認してシステム上に手入力しなければなりませんでした。しかし、マイナ保険証の普及によって、患者から情報提供の許可を得ると、薬や特定検診などの情報が医師や薬剤師へスムーズに共有されるため、業務効率化を図ることができます。保険資格の情報確認においても、マイナンバーカードと顔認証付きカードリーダーを用いて資格情報を自動取得することができるため、薬剤師や薬局スタッフの負担が軽減され、さらに自動化により誤記リスクも減らすことができます。
マイナ保険証の普及において薬剤師に求められること
マイナ保険証の普及によって、これまで問診で得ていた患者の薬歴や検査結果などの情報を、薬剤師が容易に確認できるようになります。これにより、患者に処方された薬だけでなく、検査値や薬の飲み合わせを考慮した、より正確な疑義照会や服薬指導が可能になります。
少子高齢化が進行する現代において、ポリファーマシーや重複投薬を防止することは非常に重要です。そのため、薬剤師はマイナ保険証の移行を積極的に推進する役割を担わなければなりません。令和7年12月までにマイナ保険証への完全移行を達成するためには利用率の低い薬局でのマイナ保険証使用の推進が必須となります。薬局来局時や服薬指導の際にマイナ保険証移行への声掛けを積極的に行い、より良い医療を届けるために患者に周知させることが求められるでしょう。
(2024年10月掲載)
編集:株式会社 医学アカデミー