TOPICS

災害発生時、薬剤師にできること

薬剤師トレンドBOX#43

topics

自然災害の発生時には多くの傷病者が発生するほか、受診が困難になることで治療が中断したり、避難所での生活で体調を崩したりする方も多くなり、医療機関や医療従事者には迅速な対応が求められます。今回は災害時の薬剤師の役割についてご紹介します。

薬局や病院も大きな被害を受ける「災害」

日本はその位置や地形、地質、気象などのさまざまな自然的条件から、地震や台風、豪雨や豪雪、洪水、土砂災害、津波、火山噴火などの災害が発生しやすい国であるといわれています。国土交通省の調べでは、日本の国土面積は世界の0.25%であるにもかかわらず、世界中で発生するマグニチュード6以上の地震のうち、約2割が日本とその周辺で発生していることがわかっており、日本は世界の中でも有数の災害大国であるといえます。

さらに、災害時には薬局や病院といった医療機関も大きな被害を受けることが予測されます。2011年に発生した東日本大震災では、岩手県・宮城県・福島県の3県にある計380か所の病院のうち、300か所が全壊または一部損壊し、多くの病院で入院や外来を制限せざるを得なくなりました。しかし、そのような状況の中でも、医療機関には多くの負傷者に対する応急処置や迅速な医療支援が求められます。
そのため、東日本大震災では全国から2万人を超える医療従事者が被災地に派遣されました。

災害発生時、医療機関に求められること

厚生労働省は、被災地における災害医療提供体制として、重症患者を対象に災害拠点病院が中心となり、医療提供を行うほか、救護所や避難所等において健康管理を行う必要があるとしています。まずは、被災地の保健医療活動チームで対応を行い、医療提供体制が維持できない場合には、被災地以外の都道府県から保健医療活動チームを派遣し、患者の広域医療搬送も検討します。

特に災害発生時に中心となって活動を行う災害拠点病院では、平時から定期的な訓練を行い、早急に診療機能を回復して傷病者を受け入れるよう求めています。

災害拠点病院の運営体制
  • 24時間緊急対応し、災害発生時に被災地内の傷病者等の受入れ及び搬出を行うことが可能な体制を有すること。
  • 災害発生時に、被災地からの傷病者の受入れ拠点にもなること。なお、「広域災害・救急医療情報システム(EMIS)」が機能していない場合には、被災地からとりあえずの重症傷病者の搬送先として傷病者を受け入れること。また、例えば、被災地の災害拠点病院と被災地外の災害拠点病院とのヘリコプターによる傷病者、医療物資等のピストン輸送を行える機能を有していること。
  • 災害派遣医療チーム(DMAT)を保有し、その派遣体制があること。また、災害発生時に他の医療機関のDMATや医療チームの支援を受け入れる際の待機場所や対応の担当者を定めておく等の体制を整えていること。
  • 救命救急センター又は第二次救急医療機関であること。
  • 被災後、早急に診療機能を回復できるよう、業務継続計画の整備を行っていること。
  • 整備された業務継続計画に基づき、被災した状況を想定した研修及び訓練を実施すること。
  • 地域の第二次救急医療機関及び地域医師会、日本赤十字社等の医療関係団体とともに定期的な訓練を実施すること。また、災害時に地域の医療機関への支援を行うための体制を整えていること。
  • ヘリコプター搬送の際には、同乗する医師を派遣できることが望ましいこと。

災害医療は2008年に策定された第5次医療計画から、5事業に位置付けられ、2024年度から始まる第8次医療計画では、新興感染症発生・まん延時における医療などとあわせて6事業に指定されています。
また、2019年の災害医療コーディネーター活動要領策定、災害拠点病院指定要件の一部改正に続き、2022年には日本DMAT活動要領の一部改正が行われました。2024年度からは災害救助法・改正感染症法に基づき、災害・感染症医療業務従事者に災害支援ナースが加わります。厚生労働省は災害発生時の円滑な派遣調整のための仕組みを整備し、医療従事者による迅速な医療支援を求めています。

薬局や薬剤師の被災地での役割

被災地での薬剤師の活動は、災害発生直後の取組みと復興に向けた取組みに分けられます。

災害発生直後の取組み
  • 救護所・避難所等における被災者に対する医薬品提供、服薬説明及びお薬手帳の活用
  • 被災地の病院の薬剤師業務の支援 (院内調剤、外来患者への服薬説明等)
  • 避難所等における衛生管理、防疫対策
  • 医薬品集積所等での医薬品の仕分け・管理、救護所・避難所への払い出し作業
震災から数か月経過後、復興に向けた取組み
  • 被災地の薬局、医療機関における調剤、服薬指導等による患者への継続的な支援
  • 避難所や仮設住宅入居者への巡回による薬の提供や相談及び衛生管理

災害発生直後に薬剤師の行う業務内容は、薬局や病院、避難所や救護所などで医薬品を提供したり、服薬についての説明を行ったりと、普段の薬局業務と大まかな内容は変わりません。しかし、停電や断水、物資不足が起こり、薬局の被災状況によっては仮設の薬局や店舗、避難所内の調剤所などで調剤を行う場合も考えられます。平時とは異なる環境でも、調剤や服薬指導を行わなければならず、薬剤師一人ひとりが状況にあわせた判断や活動を行う必要があるといえるでしょう。

また、薬局においては、被災により受診や処方箋の交付が困難な患者に対して、処方箋がなくても一時的に処方箋医薬品を販売することのできる措置が取られることもあります。実際に、2024年1月1日に起こった能登半島地震でも、翌日に厚生労働省から通知が出されています。
このような場合にはお薬手帳やマイナンバーカードによる患者の服薬情報の確認が必要となり、平時からの適切な服薬指導が重要な意味をもつといえます。

薬剤師が被災地の医薬品供給の要に

薬剤師は、避難所や救護所の状況を見極めながら、限られた医薬品を仕分ける役割も担うとされています。
医薬品の供給について東日本大震災では、医療機関などの注文に対して、現地の卸業者が対応するという平時と同様の方法のほか、国のネットワークを活用して全国から医薬品が調達され、各県の医薬品集積所に搬入する方法も取られました。しかし、地震・津波による道路網の損傷とガソリン不足のため、医薬品等の物資の搬送も困難となったことが報告されています。薬剤師は被災地の状況を適宜確認し、周囲の避難所や救護所と連携をはかりながら医薬品の輸送や備蓄管理を行うことが期待されています。

いざというときのために、普段から対策を

日本は世界でも有数の災害大国です。国土交通省は近い将来、巨大地震や風水害、火山噴火、高潮などが起こる可能性も挙げています。普段から薬局でも、「今災害が起こったらどうするか」を一人ひとりが考えて話し合い、対策を練っておくことで、いざというときに患者や地域住民、医療従事者自身を守ることにつながるでしょう。

(2024年4月掲載)
編集:株式会社 医学アカデミー

トップページ