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「保湿は乾燥を防ぐ」だけじゃない!?

薬剤師トレンドBOX#41

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気温とともに湿度も下がる冬。暖房の使用も増え、皮膚の乾燥を感じる人も多いのではないでしょうか。皮膚の乾燥を放置してしまうと、皮膚トラブルや皮膚疾患にもつながります。保湿はただ乾燥を防ぐだけではなく、さまざまなメリットがあるといわれています。今回は薬剤師が知っておきたい、皮膚の保湿についてご紹介します。

外的刺激から体を守る皮膚

頭皮からつま先まで、全身を覆う皮膚は外からの刺激や感染から体を守ってくれる大切な器官で、表皮や真皮、皮下組織などから構成されています。外的刺激から体を守るだけでなく、発汗などにより体温を調節したり、体液を保持したりとさまざまな役割をもっています。

皮膚の役割
● 保護作用

外的刺激から体を守り、水分の喪失を防ぐ

● 知覚作用

触覚・痛覚・温度・かゆみなどを感じる

● 体温調節作用

体温を調節する

● 分泌作用

皮脂や汗を分泌し、乾燥や細菌の繁殖を防ぐ

● 排泄作用

汗とともに老廃物を排出する

● 貯蓄作用

皮下に脂肪を蓄え、保温する

保湿不足がさまざまなトラブルの原因に

乾燥により皮膚のバリア機能が低下すると化学物質や紫外線、細菌などの刺激や感染から体を守ることが難しくなり、皮膚トラブルを引き起こすだけでなく、皮膚疾患などの引き金にもなります。また、かゆみなどを引き起こすことで眠りの質が低下したり、集中力や意欲が低下したりするなど、QOLにも大きな影響を与えます。
特に空気が乾燥する冬には、皮膚も乾燥しやすくなります。また、高齢者や小児ではもともとのバリア機能が低く、皮膚トラブルが悪化して皮膚疾患につながりやすいため、注意が必要です。

アトピー性皮膚炎

かゆみを伴う紅斑や丘疹などの皮疹ができ、悪化や寛解を繰り返す疾患です。主に乳幼児期に好発し、特徴的な皮疹が顔に現れて体幹、四肢へ徐々に降下、幼小児期には頸部、四肢屈曲部の病変が目立つようになっていきます。思春期以降に発症する人もいて、その場合は上半身に皮疹が強い傾向があります。保湿と薬物療法を中心に治療が行われます。

アトピー性皮膚炎の発症や悪化には、遺伝やアレルギーなどの素因に加えて、さまざまな環境因子が関係していると考えられています。近年では、経皮感作(アレルゲンが皮膚のバリアを通過して表皮や真皮に侵入し、免疫細胞と反応することでアレルギーの原因となること)が起こると、アトピー性皮膚炎だけでなくさまざまなアレルギー疾患の原因になりうるといわれています。

特に乳児期の皮膚の発達は、生涯に及ぶアレルゲンの経皮感作やアレルギー疾患の発症に影響を与える可能性があります。日本や欧米において、「アトピー性皮膚炎のハイリスク群(親または兄弟がアトピー性皮膚炎)の新生児に対して早期から保湿剤でスキンケアを行うことにより、アトピー性皮膚炎の発症率が低下したと報告」1) されており、経皮感作の予防のためには乳幼児期からの保湿が重要です。

乾皮症・皮脂欠乏性湿疹

乾皮症は皮膚が乾燥することによりかゆみを伴う疾患です。皮がむけたり、ひび割れたりするほか、悪化すると皮膚が剥がれ落ちる鱗屑や落屑などにつながります。さらに、掻破によって湿疹を生じる疾患を皮脂欠乏性湿疹といいます。

皮脂や汗の分泌が減少し、皮膚のバリア機能が低下する高齢者に多く見られ、上肢や下腿、腰部などに発症します。乾皮症は入浴時などの洗浄や空気の乾燥などが原因であるため、保湿や生活指導が治療の中心になりますが、皮脂欠乏性湿疹には外用薬の塗布なども必要になります。

乾燥した皮膚はかゆみを伴うことが多く、爪でかいてしまうことでさらに炎症を起こし、かゆみが増してしまうという悪循環を繰り返してしまいがちです。早期から乾燥へのアプローチが必要であるといえるでしょう。

服薬指導に添えたい保湿のすすめ

保湿には乾燥やかゆみを抑え、過ごしやすくなるメリットがある反面、全身に複数の保湿剤や外用薬を塗ることを負担だと感じる患者さんも多くいます。特に症状があまりない場合や症状が軽快した場合には、面倒だと感じてしまう人もいるでしょう。そのような場合には、乾燥がさまざまなトラブルにつながる可能性があることを説明してみるとよいかもしれません。また、保湿剤はさまざまなタイプが処方・販売されています。使用感や使い勝手を確認し、患者さんにあわせた剤形や基剤を考慮できるとよいでしょう。

加えて、早く治したいという思いから擦り込むように塗布していたり、保湿剤の量が少なかったり、入浴の後に時間が空いてから保湿剤を塗布したりすることで、十分な保湿ができていない場合もあります。保湿剤や外用薬の正しい情報を伝えるとともに、症状の部位や範囲、塗布の負担感なども確認するようにしましょう。

患者さんの生活習慣もしっかりと確認

保湿剤の塗布に加えて、重要なのが患者さんの生活習慣の把握です。特に冬場には、高温での入浴や長湯、電気毛布などの長時間の使用、タオルでの摩擦、肌にあわない衣服の選択なども乾燥につながります。服薬指導に添えて、普段の生活習慣についても患者さんに確認することで、よりよい乾燥への対策が見つかるかもしれません。

(2024年1月掲載)
編集:株式会社 医学アカデミー

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