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令和6年度調剤報酬改定に向けての振り返り
薬剤師トレンドBOX#40
地域包括ケアシステムの構築や患者のための薬局ビジョンの推進に向けた調剤報酬改定が行われる令和6年度ですが、令和4年度の改定で行われた「対物業務から対人業務への転換」を軸に議論が進められていきます。今回は改めて、令和4年度の改定を振り返ってみましょう。
求められる「対物業務」から「対人業務」への転換
これまで「薬局・薬剤師業務は対物業務中心」とされていました。
薬局・薬剤師業務の評価体系の見直しにより、調剤業務における評価が明確に「対物業務と対人業務」に分けられました。
さらに、対人業務に対する評価が拡充されたことにより、薬局・薬剤師業務は「対物業務」から「対人業務」への転換を強く求められています。
調剤業務を見直し、対物業務と対人業務を整理
令和4年度改定では、調剤技術料に含まれていた「調剤料」の区分が廃止され、対物業務への評価を表す「薬剤調製料」と、対人業務への評価を表す「調剤管理料」が新設されました。
● 薬剤調製料
薬剤調製や取り揃え・監査業務に対する評価
● 調剤管理料
処方内容の薬学的分析、調剤設計等に対する評価
さらに、複数の医療機関から6種類以上の内服薬を処方される患者の薬学的分析を評価する「調剤管理加算」も新たに導入されました。 初めて処方箋を持参した患者や処方内容が変更された患者に対し、必要な薬学的分析を行った際に、それぞれ3点が加算される仕組みです。 ただし、算定ができるのは、過去1年間に服用薬剤調整支援料を1回以上算定した実績を有する薬局に限られています。
調剤管理加算が新たな評価として導入されたことにより、薬剤師が多剤服用患者の服薬状況を的確に理解し、適切な指導・薬剤管理を行うことが期待されます。 これは患者とのコミュニケーションにおいて、従来よりも一歩踏み込んだアプローチが求められているともいえるでしょう。
地域支援体制加算の見直しと薬局の新展開
令和4年度改定では、地域支援体制加算の評価体系が、地域医療に貢献する体制や実績を評価することを目的に、改めて見直されました。 また、地域支援体制加算3の新設により、地域支援体制加算算定のハードルが部分的に緩和されました。
地域支援体制加算を算定できる薬局
● 地域支援体制加算1、地域支援体制加算2
調剤基本料1を算定している保険薬局
● 地域支援体制加算3、地域支援体制加算4
調剤基本料1以外を算定している保険薬局
地域支援体制加算の評価体系からもわかるように、薬局の評価基準が大きく変化し、施設基準にあわせて評価されるようになったのも、近年の調剤報酬改定の特徴です。
例えば、令和2年度改定において新設された「調剤後薬剤管理指導加算」では、「地域支援体制加算を届け出ている保険薬局」が施設基準として組み込まれました。
さらに、令和4年度改定では、「連携強化加算」や「地域支援体制加算」には「災害や新興感染症への対応」が、「服用薬剤調整支援料2」には「重複投薬等の解消に係る実績を有していること」が施設基準として新たに組み込まれました。
「全ての薬局が算定できる」という構造から、「要件をクリアした薬局が届け出・算定できる」構造へ徐々に変化しつつあることは、薬局が提供するサービスの質を向上させ、対人業務に重きを置く方向へ、国が舵を取っていることを示しています。
また、薬局が地域に求められる役割を果たすための体制を整備することや、活動範囲を拡大することが求められているといえるでしょう。
対人業務へのシフトの進行
「対物業務から対人業務へ」の転換は、今後さらに求められていくと予想されます。 令和6年度改定は2025年に向けての最終の改定となるため、過去の改定を参考に、今後の動向を予測し、薬剤師として求められる役割をしっかり認識しておくことが重要なのではないでしょうか。
(2023年11月掲載)
編集:学校法人 医学アカデミー