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薬剤師が知っておきたい「胃食道逆流症」

薬剤師トレンドBOX#35

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忘年会や新年会、歓迎会などのイベントが続くシーズン、胃腸への負担が気になる人も多いのではないでしょうか。 食べ過ぎや大量の飲酒などは消化器疾患の引き金となります。 今回は食生活と関わりの深い疾患“胃食道逆流症”についてご紹介します。

胃食道逆流症とは

胃腸への負担には、食生活やストレス、喫煙、飲酒など多くの要因があげられますが、それらが胃食道逆流症の引き金となります。 患者さんごとにその原因は異なるため、治療を行う上で“胃腸が不調となる背景”について薬剤師がしっかりと把握しておくことが大切です。

胃食道逆流症の分類と症状

胃食道逆流症(Gastro Esophageal Reflux Disease:GERD)は、 胃内容物の逆流を防ぐ下部食道括約筋(Lower Esophageal Sphincter:LES)の機能が低下することにより、 酸性の胃内容物が食道や口腔内に逆流してしまい、胸やけなどの症状が起こる疾患です。

胃食道逆流症の分類
1. 逆流性食道炎
内視鏡検査で食道に発赤やびらん、潰瘍などの粘膜障害がみられる
2. 非びらん性胃食道逆流症
胸やけなどの症状があるが、食道の粘膜には発赤、びらん、潰瘍などの異常がみられない

日本消化器病学会発行の胃食道逆流症(GERD)診療ガイドラインによると、逆流性食道炎には自覚症状のあるものとないものに分けられます。 また、非びらん性胃食道逆流症は、逆流性食道炎に比べると酸の逆流が少ないものの、症状の強さは同等であるといわれています。

症状は胸やけ、呑酸、ゲップ、咳などがあげられます。 呑酸による口の中の違和感や咳については、患者さん自身が胃食道逆流症が原因であると気づかないこともあるため、注意が必要です。

胃食道逆流症の主な症状
● 胸やけ

みぞおちから胸の下あたりまで、焼けつくような違和感がある

● 呑酸

のどの辺りや口の中が酸っぱい感じがする

● 胃もたれ

食べ物が胃でつかえている感じがある

● のどの違和感

のどの痛みや、イガイガ、飲み込みにくさがある

● ゲップ

頻繁にゲップがでる。酸っぱい味を感じる

● 咳

急な咳込み、咳が長期間続いている

胃食道逆流症の原因と治療

胃食道逆流症の主な原因
  • 下部食道括約筋の機能低下による弛緩
  • 腹圧の上昇(前かがみな姿勢、肥満など)
  • 過食
  • 刺激の強い食事
  • 食道や胃の蠕動運動の低下 など

通常、食道下部にある下部食道括約筋が、胃内容物が逆流しないようにする重要な役割を担っています。 しかし、何らかの原因により下部食道括約筋が弛緩すると、胃酸を含んだ胃内容物が逆流し、酸に弱い食道粘膜が刺激されることでダメージを負ってしまいます。 そのため、治療や予防には食道粘膜への刺激を抑えるような生活・食事指導が必要です。

胃食道逆流症の治療

生活・食事指導 ・過食や高脂肪食を避ける
・アルコールや炭酸飲料を控える
・食後すぐに横にならないようにする
・睡眠時には上半身を少し挙上する
薬物療法 ・胃酸分泌抑制薬や胃酸中和薬を用いる
手術療法 ・噴門形成術、食道裂孔ヘルニアの修復など

胃食道逆流症の初期治療では、過食や高脂肪食、アルコール、炭酸飲料などの刺激物を控える食事指導を行います。 また、肥満の人は腹腔内圧が高く胃酸の逆流が起こりやすくなるため、減量の指導も重要です。
また、腹圧が高くならないように、睡眠時は枕を高くして上半身を挙上するなど具体的な生活指導も行いましょう。

薬物療法では、胃酸分泌抑制薬で胃酸の分泌を減少させます。 また、制酸薬、消化管運動機能改善薬、粘膜保護薬などを併用することもあります。

なお、初期治療終了後に治療を中断すると再発が起こりやすいといわれているため、 治療の重要性について患者さんへ事前にしっかりと説明しておきましょう。

身近な疾患である胃食道逆流症

普段気をつけていても、忘年会や新年会、歓迎会などの楽しいイベントが続くシーズンは、刺激の強い食べ物が多くなってしまいがち。 病院や薬局でも胃食道逆流症の患者さんに出会う機会が増えるかもしれません。 薬剤師として、「胸やけ」や「胃もたれ」のお話を患者さんから聞いたときには、 医薬品の説明に加えて刺激物を避ける食事や生活習慣などのお話ができるとよいですね。

参考文献

  • 薬剤師国家試験対策参考書 改訂第12版 ⑥薬理・病態・薬物治療Ⅱ
    学校法人 医学アカデミー(編)- 薬学ゼミナール 2022
  • 日本消化器病学会 胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン 改訂第3版
    日本消化器病学会(編)-南江堂 2021 https://www.jsge.or.jp/app/webroot/guideline/guideline/

(2023年1月掲載)
編集:学校法人 医学アカデミー

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