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服薬指導に添えたい秋のおススメ食材
薬剤師トレンドBOX#34

「スポーツの秋」や「食欲の秋」ともよばれる、過ごしやすい季節がやってきました。 健康の維持には適度な運動とバランスのとれた食事が大切です。今回は、服薬指導に添えたい秋のおススメ食材をご紹介します。
運動と栄養の関わり
筋肉量は加齢とともに減少し、それに伴い筋力も低下します。筋肉量の減少は運動能力の低下や外見の変化を引き起こすだけでなく、特に高齢者では転倒の危険性が高まるなど健康状態への影響などにもつながります。
健康を維持するためには、運動と食事によって筋肉量を減少させないことが大切です。また、休養とそのタイミングも重要といわれています。
薬剤師として患者さんの健康サポートを行う際には適度な運動とバランスのよい食事、適切な休息をあわせて説明できるようにしておきましょう。

バランスのよい食事の鍵となる五大栄養素
バランスのとれた食事には、五大栄養素とよばれる栄養素が鍵となります。
五大栄養素とは、活動のエネルギー源となる糖質・脂質・たんぱく質の三大栄養素に、直接のエネルギー源とはなりませんが、他の栄養素と一緒になってエネルギーを生み出したり、筋肉の動きをサポートしたりする、ビタミン・ミネラルの2つを加えたものです。
五大栄養素とは?
● 糖質
筋肉や肝臓に蓄えられ、体を動かすエネルギー源となる、ガソリンのような役割を担っています。運動をするときには骨格筋や心筋のエネルギー源としても働きます。
<糖質を多く含む食材>
穀物、いも類、果物、ごぼうや豆、きのこなど
● 脂質
ほとんどは内臓脂肪や皮下脂肪として蓄えられ、エネルギーを貯蔵する役割を担っていますが、直接的なエネルギー源としての働きもあります。
<脂質を多く含む食材>
バターやマーガリン、マヨネーズなどのほか、肉や魚の脂肪など
● たんぱく質
筋肉や血液の材料となるほか、皮膚やホルモンをつくる大切な栄養素で、酵素やホルモンとしても働いています。不足すると筋力の低下や貧血につながります。
<たんぱく質を多く含む食材>
肉や魚類のほか、卵、大豆、牛乳など
● ビタミン
ビタミンB群は糖質や脂質などを消費する手助けをしています。また、ビタミンDは骨を丈夫にするカルシウムの代謝をスムーズにする役割を担っています。
<ビタミンを多く含む食材>
野菜、果物、きのこなど
● ミネラル
直接のエネルギー源にはなりませんが、骨や血液の材料となったり、心臓や筋肉の動きを助けたりと重要な役割を担っています。
<ミネラルを多く含む食材>
乳製品、海藻など
この五大栄養素がバランスよくとれていないと、せっかく摂取した栄養素をうまく活用できなくなります。食が細く、1回の食事で十分な栄養がとれない場合などは、必要に応じておやつ(補食)として足りない栄養素を補うこともおススメです。
秋のおススメ食材
スーパーマーケットなどでは、季節を問わずさまざまな食材が簡単に手に入りますが、食材にはそれぞれの“旬”があります。旬の時期の食材はとりわけ栄養価が高く、新鮮で美味しく食べることができます。
いろいろな食べ物が美味しい「食欲の秋」に、特におススメの食材をご紹介します。
● きのこ

きのこに含まれる栄養成分は種類によって違いますが、主にエネルギーを生み出す手助けをするビタミンB群や、骨を丈夫にする手助けをするビタミンD、心臓や筋肉の動きを助けるカリウムや骨の材料になるリンなどのミネラルが豊富に含まれています。 特に、乾燥きのこは生のものに比べて栄養価が高くなるといわれています。
● さつまいも

さつまいもは糖質を主な成分としていますが、白米に比べてカロリーは低く、食物繊維やカルシウム、ビタミンなども豊富に含んでいます。
食物繊維が多いために糖質の消化吸収がゆるやかで、腹持ちがよく、運動時のエネルギー補給にもおススメの食材です。
また、さつまいものビタミンは加熱しても壊れにくいといわれています。手に入りやすく、調理もしやすいため、おやつとしても食べやすい食材です。
● かぼちゃ

かぼちゃには糖質をはじめビタミンや食物繊維が多く含まれています。 特に体内でビタミンAに変化するβカロテンは体の粘膜を強化し、免疫力アップの効果もあります。 「冬至にかぼちゃを食べると風邪を引かない」といわれ、ハロウィンでもおなじみの食材です。 スープやグラタンにすると美味しく食べられるので、少しずつ寒くなる秋にはぴったりの食材だといえるでしょう。
● 鮭

秋鮭に多く含まれるアスタキサンチンは、活性酸素を除去する強い抗酸化作用をもち、疲労回復に効果があります。 また、ビタミンB群やビタミンDも豊富で、運動前後の食事や健康の維持におススメの食材です。 アスタキサンチンやビタミンDは油に溶け出す性質があるため、ソテーやムニエルなど、油を使用したメニューがおススメですが、塩分やカロリーの摂りすぎには注意が必要です。
● 柿

秋にはさまざまな果物が旬を迎えますが、中でもおススメの果物が柿です。 「柿が赤くなると医者が青くなる」ということわざもあるように、柿はビタミンを多く含み、疲労回復や風邪の予防に効果があるといわれています。 また、カリウムやナトリウムも豊富で、運動中に起こる筋肉のけいれんを予防してくれる効果もあります。 栄養素が豊富なぶん、食べ過ぎには注意が必要で、1日に1~2個までの摂取としましょう。
患者さんとの話題にしたい「スポーツの秋」と「食欲の秋」
病院や薬局で接する患者さんと、運動や食事の話をする機会は多くありますよね。
「適度な運動」や「バランスのよい食事」とお話しするよりも、具体的な旬の食材や実際の調理法の話ができると、患者さんもメニューが思い浮かび、食材を取り入れやすくなります。
おススメ食材の話を服薬指導に添えて、健康サポートに役立ててみてはいかがでしょうか。
参考文献
- 図解入門 よくわかる栄養学の基本としくみ
中屋豊(著) - 秀和システム 2009 - 食事バランスガイド早分かり | 農林水産省
- 旬を取り入れた食生活(秋・冬)| e-ヘルスネット 厚生労働省
- 食事バランスガイド(実践・応用編)| e-ヘルスネット 厚生労働省
- 食品成分データベース | 文部科学省
(2022年10月掲載)
編集:学校法人 医学アカデミー