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変わる後期高齢者医療制度

―新たに加わる2割負担の区分―

薬剤師トレンドBOX#33

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増え続ける高齢者の医療費を日本全体で支えるためにつくられた後期高齢者医療制度。団塊の世代が75歳を迎え始める2022年10月1日、2割負担の区分が新設されます。今回は新しくなる後期高齢者医療制度について改めてご紹介します。

世界一の高齢社会を支える、後期高齢者医療制度とは?

日本の総人口が減少する中で、高齢者人口は年々増加し、65歳以上の高齢者が総人口に占める割合(高齢化率)は2021年7月15日時点で29.1%(総務省統計局)と、日本は世界一の高齢社会です。

年々増加する高齢者の医療費を日本全体で支えるために、後期高齢者医療制度はつくられました。2006年に健康保険法等の一部が改正され、2008年から「高齢者の医療の確保に関する法律」(高齢者医療確保法)に基づいてスタートしました。

後期高齢者医療制度の対象者

この制度の対象となるのは75歳以上の後期高齢者並びに65歳以上75歳未満で一定の障がいのある人です。

65歳以上75歳未満でも後期高齢者医療制度の対象となる
「障がい認定の基準」

下記の手帳又は年金の受給権を取得している方

  • 身体障害者手帳1級・2級・3級
  • 身体障害者手帳4級をもつ人で、次のいずれかに該当する人
    • 音声機能、言語機能の障がいがある
    • そしゃく機能の著しい障がいがある
    • 1号(両下肢全ての指を欠くもの)
    • 3号(1下肢を下腿の2分の1以上欠くもの)
    • 4号(1下肢の著しい障がいがある)
  • 療育手帳A(重度)
  • 精神障害者保健福祉手帳1級・2級
  • 障害基礎年金1級・2級の国民年金証書

後期高齢者医療制度の目的と運営

日本はもともと、被用者保険と国民健康保険の2つで国民皆保険制度が成り立っていましたが、加入する世代に偏りが出ることにより、現役世代の保険料の負担が増加していくという構造的な問題がありました。

後期高齢者医療制度は高齢者の医療を社会全体で支え、現役世代と高齢者との間の医療費負担を公平でわかりやすくすることを目的として始まりました。運営主体は都道府県ごとに全ての市町村が加入する「後期高齢者医療広域連合」です。
この広域連合では被保険者の資格認定・管理や被保険者証の発行、医療機関に対する医療費の支払いなどを行い、市町村では保険料の徴収と実際の窓口業務(届出・申請受付等)を行っています。
運営主体を市町村や都道府県の区域を超えた広域連合が担うことで、保険財政の安定化や持続性などを図ることも狙いとされました。

高齢者の医療費を社会全体で支える仕組みへ

後期高齢者が病院の窓口で支払う一部負担金は原則として1割(現役並所得がある人は3割)で、残りの医療費は後期高齢者医療制度で賄われています。

後期高齢者医療制度の財源構成は、①公費(国・都道府県・市町村)が約50%、②現役世代からの支援金が約40%、③後期高齢者の保険料が約10%となっています。現役世代と高齢者との間の医療費負担を公平でわかりやすくすることを目的とした後期高齢者医療制度ですが、現役世代の負担が大きいことがわかります。

厚生労働省によると、後期高齢者医療制度における現役世代からの支援金は、年々増加傾向にあります。
1947年から1949年に生まれた団塊の世代が75歳を迎える2022年以降、医療費はさらに増加するとみられています。2015年度には5.8兆円(厚生労働省)であった現役世代からの支援金は、2025年度には8兆円を超える見込みです。

若い世代は貯蓄が少なく、住居費や教育費など支出が多いのに対し、高齢者の世帯の金融資産は国民全体のおよそ半分を占めているといわれています。
現役世代が負担する支援金の伸びを抑え、世代間で医療費を公平に負担できるようにすることは早急に解決すべき課題とされています。

窓口負担に2割負担が新設

有病率の高い高齢者に必要な医療を確保しつつ、負担能力のある高齢者にはなるべく負担を求めるために、2022年10月1日から、後期高齢者の窓口負担に2割負担が新設されます。

後期高齢者の窓口負担の区分

厚生労働省の試算によれば、2割負担の対象者は約370万人に上る見込みです。
なお、施行後3年間は外来受診における1か月の負担増加額を3,000円までに抑える配慮措置がとられます。

限られた財源を全ての世代に均等に分配

日本は2005年以降、高齢化率において世界トップを独走しています。長い間、日本の社会保障制度は高齢者に手厚い体制をとってきましたが、少子高齢化が加速した現在、限られた財源を均等に分配するために「全世代型」の社会保障制度へと変化しつつあります。
必要な医療や福祉を提供しながら、いかに社会保障制度を維持していくのか、日本の社会保障制度は重要な局面を迎えているといえるでしょう。

(2022年9月掲載)
編集:学校法人 医学アカデミー

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