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2022年から始まる「リフィル制度」
―リフィル処方箋の仕組みについて―
薬剤師トレンドBOX#31
「リフィル制度」は、2022年度診療報酬改定のトレンドの1つになっています。アメリカやヨーロッパの一部の国では既に運用されており、アメリカでは「refill(詰替え)」、イギリスでは「repeat(繰返し)」とよばれ、国ごとにその仕組みは若干異なります。現在、画一的な定義はありませんが、日本版リフィル制度はどのような仕組みになるのか、今後予想される展開を含めご紹介します。
リフィル制度と分割調剤
「リフィル処方箋」=「繰返し使える処方箋」で長期処方を行う。このように考える方も少なくないのではないでしょうか。では、分割調剤とリフィル制度の違いは何なのでしょうか。
日本には従来、長期処方に対する仕組みとして「分割調剤」があります。
分割調剤
分割調剤とは、①医薬品の長期保存が困難、②後発品の試用、③服薬管理が困難な場合に医師の指示によって行われる分割投薬です。処方箋は表紙を含めた複数枚の「回数券方式」で交付されます。
2016年度調剤報酬改定で医師の指示による「③服薬管理が困難な場合」の分割調剤が可能となりました。例えば90日分の処方箋の場合、30日分ずつの3回に分けて調剤(投薬)を行います。分割調剤では、要件となる「服薬管理が困難」というキーワードが非常に重要なポイントとなっています。
リフィル制度におけるリフィル処方箋
リフィル処方箋は、一定期間内に繰返し使用できる処方箋です。「薬剤師による服薬管理の下、一定期間内に処方箋の反復利用が可能である患者」が対象となっています。交付形式は1枚の処方箋を繰返し利用する「定期券方式」で、90日分の内服薬を患者に投薬する場合、30日分の処方箋を3回まで繰返し利用できます。
分割調剤とリフィル制度の違い
● 処方箋様式
- 分割調剤
- 90日分を3回に分けて投薬をする
- リフィル
- 30日分の処方箋を3回使用し計90日分を投薬する
最終的に患者に渡る医薬品は「90日分」と違いはありませんが、そのプロセスをみると分割調剤は「90日÷3」、リフィル制度では「30日×3」になります。これらの点からも分割調剤とリフィル制度は似て非なる制度だということがわかります。
リフィル制度で問われる薬剤師の判断と責任
リフィル処方箋に応じた薬剤師は、2回目の投薬の際に患者の体調、副作用の有無、残薬や服用期間中の併用薬の有無などを確認する必要があります。その上で、2回目の調剤を行います。また、調剤を行うべきでないと判断した場合は、受診勧奨や処方医への疑義照会が必要になります。
ここでのポイントは、2回目以降の処方箋を調剤するか否かの判断は「薬剤師がする」ということです。仮に2回目の調剤以降、患者の健康状態に何らかの問題が生じた際、その調剤が適切な判断で行われたのか、薬剤師の責任が問われる可能性があります。服用期間中に新たに処方された医薬品はないか、併用薬との問題はないか、検査値などに問題がないか、リフィル処方箋は医師によって長期的な処方が可能という判断のもと発行されますが、患者の日常生活における状態は時間とともに変化します。薬剤師は、万が一の可能性を常に考えて判断する必要が生じ、また責任が問われることになります。
今後の方向性 ―リフィル制度はどのように活用されていくのか―
今回の診療報酬改定では、高度医療を担う特定機能病院や地域医療支援病院、大病院の外来機能に関する改定が行われ、症状の安定している慢性疾患の患者は「地域のかかりつけ医へ」という施策が進められています。そしてリフィル制度の導入により医師の負担軽減やタスクシフト、医療費抑制が期待されています。
また、地域の診療所(クリニック)では、医療機関からの逆紹介患者の受入れを行い、医療における機能分化を進めていくことが求められています。その実現のためには、多くの患者を抱え余裕のない診療所が、逆紹介患者を受け入れられる環境を作らなければなりません。今後、診療所の既存患者に対するリフィル制度を活用した医療負担の軽減と新規紹介患者の受入れが求められていきます。
近い将来に、病院から診療所へと、リフィル処方箋の発行の場は徐々に地域に移行していくことになるでしょう。
(2022年5月掲載)
編集:学校法人 医学アカデミー