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薬局薬剤師としておさえておきたい
新型コロナウイルス感染症ワクチンに関する基本知識

薬剤師トレンドBOX#26

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新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種が進む中、患者さんからワクチンについての質問を受ける機会も増えたのではないでしょうか?
今回は薬局に来局された患者さんのお問い合わせに役立つ、新型コロナウイルス感染症ワクチンの特徴をご紹介します。

※ 本記事は下記を出典として作成しています。
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/(厚生労働省)

接種がはじまる新型コロナワクチン

世界199か国・地域で接種が進む新型コロナウイルス感染症ワクチン。日本では2021年2月14日にA社のワクチン「一般名=トジナメラン」、2021年5月21日にB社のワクチン「一般名=SARS-CoV-2ワクチン(遺伝子組換えサルアデノウイルスベクター)」およびC社のワクチン「一般名=コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」が薬事承認されました。
A社のワクチンとC社のワクチンは、予防接種法に従い2月17日、5月21日よりそれぞれ接種が開始され、6月11日時点の累計接種回数は2,360万回を超えました。

接種後の副反応事例については、厚生労働省のウェブサイトで更新情報を確認できます。
【関連リンク】 新型コロナワクチンの副反応報告について

改正予防接種法
−コロナワクチンの「臨時接種の特例」をおさえる−

現在、2022年2月末までを接種期間の目安として改正予防接種法のもと医療従事者と高齢者を対象として順次接種が行われています。6月21日より職場や大学での「職域接種」も開始しました。

予防接種法とは

この法律は、伝染のおそれがある疾病の発生及びまん延を予防するために公衆衛生の見地から予防接種の実施その他必要な措置を講ずることにより、国民の健康の保持に寄与するとともに、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ることを目的とする。
(予防接種法 第一条)

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、2020年の臨時国会において改正予防接種法が成立しました。改正法では新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を「臨時接種の特例」と位置づけ、厚生労働省の指示のもと、都道府県と協力しながら市町村が実施します。

改正予防接種法では、費用は全額公費で接種対象者は無料となり、健康被害が生じた場合、救急措置として企業の損害賠償を国が肩代わりすることになっています。

接種対象年齢は、2021年6月現在、国内ではA社のワクチンでは接種する当日に12歳以上、C社のワクチンでは接種する当日に18歳以上とされています。改正法に基づく公費での接種対象は、接種の日に満12歳以上です。国内に居住する外国人の方も、原則接種の対象となります。

なお接種は努力義務であり、本人の意思に基づき、接種を望まない場合は接種しないことを選択することができます。

地域ごとの接種会場を把握

原則、住民票所在地の市町村の医療機関や接種会場で接種することができます。東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県/大阪府、京都府、兵庫県といった「対象地域」では、国や都道府県の設置する大規模接種会場で接種することも可能です。

地域ごとの接種会場は自治体のウェブサイトや問い合わせ窓口から確認できるほか、厚生労働省の運用するウェブサイト「コロナワクチンナビ」から全国の接種会場を探すこともできます。

ワクチンの新しい仕組み
−mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン−

2021年6月現在、接種されているA社のワクチンとC社のワクチンはいずれもメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンです。

mRNAワクチンは、病原体のタンパク質をつくるもとになる遺伝子を体内に取り込ませることで抗体を産生させる働きが基本となっています。
コロナウイルスは、ウイルス表面にあるヒトの細胞へ侵入するために必要なタンパク質であるスパイクタンパクが、ヒト細胞のACE 2と結合して感染します。このスパイクタンパクを産生する遺伝情報を体に認識させ、ウイルスの遺伝子情報であるmRNA を投与することで感染力を抑える中和抗体が体内で産生されるようになることが目的です。

ワクチン接種時の注意についてよくある質問

接種に先立ち、薬局カウンターで質問を受けるケースから、よくある患者さんの背景の例を紹介します。接種のメリットとデメリットをよく検討し、主治医と相談しながら判断することを説明します。

【高血圧や糖尿病などの基礎疾患を有する方】
高血圧や糖尿病、喘息、肥満、心筋梗塞、心不全、腎臓病といった基礎疾患がある方は新型コロナウイルス感染時に、重症化するリスクが高いです。
そのため基礎疾患の治療のため通院・入院している方は、「基礎疾患を有する者」として優先接種の対象となっています。
【がん、HIV感染などの免疫が低下する疾患】

免疫が低下していると考えられるがん、骨髄移植や臓器移植後、先天性免疫不全、HIV感染者等は、接種に先立ちかかりつけ医に相談しましょう。

新型コロナウイルス感染時に、重症化するリスクが高いため、一般的な理由がなければ優先接種の対象となっています。
mRNAワクチンは、新型コロナウイルスそのものが含まれているわけではないので、免疫が低下していることが原因でワクチン接種により感染することはありません。ただし、免疫機能が低下しているため、予防接種効果が低く現れる可能性があります。

【血が止まりにくい疾患】
現在接種が進められている2種のワクチンは筋肉注射のため、筋肉内出血のリスクがあります。接種は可能ですが、安心して接種するためにも主治医に相談するとよいでしょう。
● 妊娠中、授乳中、妊娠を考えられている方
現在承認されている2種のワクチンは、妊娠、胎児、母乳、生殖器に悪影響を及ぼすという報告はなく、接種することができるとされています。
● 過去に新型コロナウイルスに感染した方
新型コロナウイルスは一度感染しても再感染する可能性があることや、自然免疫よりもワクチン接種のほうが新型コロナウイルスに対する血中抗体値が高くなることが報告されているため、新型コロナウイルスに感染した方も接種することができます。

【参考資料】既感染者への接種について(第21回 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料より抜粋)

  • CDC. Interim Clinical Considerations for Use of mRNA COVID-19 Vaccines Currently Authorized in the United States
  • Nature. 2020;586:594-599(COVID-19 vaccine BNT162b1 elicits human antibody and TH1 T cell responses)
  • N Engl J Med. 2021;384:80-82(Durability of Responses after SARS-CoV-2 mRNA-1273 Vaccination)

(2021年6月掲載)
編集:学校法人 医学アカデミー

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