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患者さんへの思いで歩む「24時間フルオープン薬局」の道

―医療の適正化へ貢献も―

薬剤師トレンドBOX#19

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24時間薬局で患者さんを支援していくにはどうすれば――

「24時間対応」はかかりつけ薬剤師の業務において話題になることが多いテーマ。さまざまな取組みが行われていますが、実際に24時間フルオープンという業務形態をとる薬局は少数派です。

今回は、患者さんのためにと佐賀県で唯一24時間フルオープンする「らいふ薬局」の実際から、この業務形態が歩む道のりと、その先に見える可能性を、医療費の適正化の観点を踏まえて紹介します。

夜間業務も可能にする「フルオープン」の原動力は?

らいふ薬局 佐賀県医療センター好生館前店(以下、らいふ薬局)は365日24時間薬剤師が常駐しています。多くの薬局にとって24時間フルオープン、特に夜間業務の実際は未知数ではないでしょうか。

24時間営業を掲げる薬局の中には、夜間は専用窓口のみで対応する場合もありますが、らいふ薬局は昼間と変わらない「佇まい」で、患者さんが入りやすい雰囲気を維持しています。夜間来局者の内訳が、急患のほか仕事で昼間に来局できなかった方やシングルマザーの方など多岐にわたることからも、24時間フルオープンが患者さん一人ひとりの生活背景に合ったサポートを実現していることが分かります。

人員の確保やコスト面を含め、昼間と変わらない状態を維持するのは簡単なことではありません。

周囲が真っ暗でも「らいふ薬局」はこうこうと明かりがついている

同薬局に勤務する薬剤師の寺井大輝さんは、24時間フルオープンの業務形態が生まれ、継続している理由として薬局のモットー「人に配慮した行動、患者さんに寄り添った行動をする」を挙げます。

制度のためなどではなく、「患者さんの状況を気遣い、しっかり寄り添うことで薬剤師としてより役に立ちたい」という思いが、24時間フルオープンを実現させました。

また患者さんだけでなく、精神的・体力的に負担がかかる夜勤には女性スタッフへの配慮がなされるなど、薬局内にもモットーは活かされており、24時間フルオープン薬局としての道を歩む原動力になっていることが分かります。

「医療の適正化」に貢献できる可能性

寺井さんは夜間の処方箋を受けるうち、1日分のみの処方が多いことと、OTC薬で代替できる成分のみで構成された処方が少なくないことに気づきました。

「OTC薬で代替すれば医療費削減の可能性があるのでは」と考えた寺井さんは実際に調査することに。日本薬学会 第139年会(2019年)でポスター演題に採択されることとなった同調査(「夜間・救急医療院外処方箋内容をOTC薬に変更した場合の医療費削減の可能性」)から一部を紹介します。

夜間救急受診後に来局する患者について(2018年6月〜11月)ー発表内容よりー

  • 胃腸炎、感冒、嘔吐などの症例が多い(図A)
  • OTC薬に存在する成分のみで構成された処方箋が約4割(図B)
  • OTC薬へ変更可能なケースで試算すると、仮に国がOTC薬を全額負担したとしても医療費が抑えられる(図C)

図A.OTCへ変更可能な薬剤の内訳

図B .処方箋薬剤の内容

図C.OTC変更可能薬剤 合計金額

日本は医療費の削減・医療資源の効率化という大きな課題を抱えています。

寺井さんの調査結果はこの課題に深く関わる夜間救急の受診に2つのケースが潜在する可能性を示唆しています。

  • OTC薬で対応でき、医療費を抑えられるケース
  • 医療機関を受診しなくても薬局で対応できるケース

これらの可能性から、24時間フルオープンの歩む道の先には、夜間救急における薬剤費削減や医療提供体制の効率化といった医療の適正化に貢献できる可能性が見えてきます。

受診前に相談できる薬局へ

薬局薬剤師は医療機関を受診したとき最後に会う医療職であることから「最後の砦」といわれてきました。これに対して寺井さんは「今後は『最初の相談役』にもなっていけたら」と思いを語ります。「病気・怪我や心身の不安をまず相談してもらうファーストチョイス(第1選択)の医療職として、OTC薬対応や医師への受診勧奨などを行っていかねばと考えています」

らいふ薬局には「24時間フルオープン」の評判を聞き、受診前に電話や実際に来局して相談される方もいらっしゃるとのこと。

医療職として必要な情報を伺い、重要度と緊急度に従って対応する「最初の相談役」としての力は、まさに上述の医療の適正化に貢献できる可能性を実現する力でもあります。

らいふ薬局の24時間フルオープンの歩みは、「病気になったらまず薬局」という薬剤師がファーストチョイスの医療職となる未来へ向かっていると言えます。

来局者に症状などを聞き、医療機関への受診が不要と判断し、OTC薬の提供を行う寺井さん

(2019年10月掲載)
編集:学校法人 医学アカデミー

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