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求められる医薬品情報の活用力

生活者の実態から浮かび上がる情報伝達の大切さ

薬剤師トレンドBOX#17

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 健康で長生きすることは誰もが抱く不変の願いです。しかしながら、暮らしの中で病気を患ったり、怪我を負ったりすることは珍しいことではありません。病気や怪我により初めて直面する症状に対して、不安な気持ちを抱いてしまうことも多々あります。

 いま、病気や怪我に苦しむ患者・生活者をより悩ます存在になりつつあるのが、インターネットをはじめとした各種媒体から得られる健康や医療に関する様々な情報です。その中には誇大な記事や根拠のない情報も数多く見受けられ、一般生活者はもとより、医療従事者にも影響を与えかねない様相を呈しています。

 このような状況を受けて、先ごろ一般社団法人「くすりの適正使用協議会」は、独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」と共催で、一般生活者向け公開シンポジウム『知っておきたい「くすり」の話』を開催しました。(2018年10月21日)

 両団体が共同でシンポジウムを開催するのは初めての取組みで、クイズや実例を交えながら専門家から情報発信される「参加型シンポジウム」として展開されました。

 シンポジウムを開催するに至った背景には、前段で紹介したように患者・生活者を悩ます偏った情報の氾濫があります。くすりの適正使用協議会(以下・協議会)によると「質的に信頼性の低い膨大な量の情報が、生活者の不安をあおる一端になっていることが社会問題となっている」といいます。日頃、患者さんと接している薬剤師であれば、このような不正確な情報に触れている方が少なくないことを実感しているかも知れません。正しく医療・健康の情報を理解するためには「専門家のアドバイスが不可欠です」と、協議会も繰り返し強調しています。

シンポジウムには日本病院薬剤師会の林昌洋会長、慶應義塾大学薬学部の望月眞弓教授、日本薬剤師会の田尻泰典副会長が登壇。医薬品にまつわることは薬剤師へ相談することを呼び掛けた。

  シンポジウムでは専門家の話を一方的に聞くだけでなく、医療従事者との向き合い方を説明したところに狙いがあります。協議会は「最適な医療とは、医療にかかわる専門家が、患者一人ひとりの状況を見極め、患者さんの考え方やQOLを尊重し、ともに連携して取り組むことである」と考えおり、「日頃の暮らしの中で無意識にインプットされる情報を鵜呑みにするのではなく、不安になったら医師・薬剤師などに相談して欲しい」と呼びかけ、気軽に相談できる医療従事者を見つけることの大切さを強調しています。

 参加者の中には現役の看護師の方もいました。話を伺うと「在宅医療に赴いているので、改めて医薬品について知る必要があると感じ、シンポジウムに参加しました。用法・用量については知っているつもりでしたが、牛乳などで薬を飲んではいけないことは知らなかったので、参加できて良かったです」と感想を述べています。

 こうした声は、薬剤師以外の医療職から見た『くすりの世界の奥深さ』と『難しさ』を改めて示唆するものかも知れません。「薬剤師さんが当たり前と思っていることでも積極的に発信していただけると、現場視点では大変助かります」(前述の看護師)という声は、イベント全体を通じた参加者からのメッセージかも知れません。

 医薬分業の進展により、患者・生活者にとって医薬品情報は身近に触れられるものになりました。しかしインターネット上などに様々な医療情報が氾濫している現実もあります。

 協議会もこうした状況を問題視し、「情報の取捨選択について、できる人と流されてしまう人とで二極化しているように思えます」とコメントしているように、患者・生活者には各々が医薬品リテラシー(医薬品の本質を理解し、医薬品を正しく活用する能力)を持ち、向上させることが求められています。

 患者・生活者が医薬品リテラシーを身につけるためにも、正しい情報支援を担う薬剤師の重要性が改めて浮かび上がってきます。

(2018年11月掲載)
編集:薬局新聞社

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