「日本一“笑顔”を描く薬屋さん」目指し、一人ひとりの健康支援に尽力

「くすりのフジ 隈之城店」鹿児島県薩摩川内市/藤井佑輔氏

健康相談に対する確かなニーズを糧に、次世代の役割に備える

相談者に親身に接する健康相談の結果、飲み会を開くようになった常連客もいるそうです。またお客さんだった人がスタッフに加わるなど、フジ薬局本店とは一味違う存在感で地域に浸透、開業数年ながらクチコミで市外にも顧客の輪が広がっており、遠方のお客さんにはネット電話での相談対応も始めました。「売上も順調に上がってきていますし、健康相談店の経営に対する手ごたえは年々強まっています」。

健康サポート薬局の役割が社会の要請となってきたことに対し、藤井氏は「健康について『どこに相談したら良いかわからない』と困っている人は意外に沢山います」と現場の実感を説明します。「そもそも身近に薬について相談できる薬局・薬店が少なく、『この薬は私に合っていますか?』と聞かれることもあります。このように健康や治療に対する不安を抱え、一人で思い悩んでいるような人がブログなどを見て来られる状況が目立っています」。ダイエット中心の展開から、お客さんは30~40代の主婦が多く、抑うつ、不安感など精神的な更年期の悩みや、老年期に差し掛かりつつある親の相談なども増えてきているそうです。「精神疾患分野も症状を抑えることが優先され、その副作用が症状を長引かせているようなことも少なくありません。難しい領域ではありますが、次の段階のテーマになると感じています」。

健康相談での基本的な考え方として藤井氏は、“健康という平均台を歩くイメージ”と伝えています。「平均台から落ちて病気になったり症状が悪化しないよう、バランス棒の役割として渡されるのが薬。それでも薬を飲み忘れたり無理な生活をすると不安定になってしまうので、『平均台自体を大きく育てると多少バランスが崩れても大丈夫ですよね』と、健康の基礎となる食事指導や生活改善の大切さを訴えています」。バランス棒の過程(投薬)では保健薬や健康食品を提案しながら、「そもそも症状に対する薬だけを提供する対処療法的な業務に物足りなさを感じ、この店を立ち上げました。なるべく薬を減らしていく薬屋が理想です」という一見矛盾した姿勢は、逆に強いプロ意識を感じさせます。

もちろん、将来的には薬剤師として調剤や在宅医療への参画も想定しています。「総合的な対応には調剤も重要で、高齢化に伴う地域の課題として在宅医療への対応は避けられません。ただ、それには私以外の薬剤師も雇用しなければなりませんし、より経営者としての能力も必要になると思います。とりあえず、30代のうちは自分自身を磨く時期だと考えています」。健康相談での確かな手応えを原動力に、次世代の役割を見据えて奮闘する藤井氏の活動はまだ始まったばかりです。

(取材実施:2018年2月)
編集:薬局新聞社